(社)日本自動車工業会では、この度「シニアとその予備層を中心とした展望」をテーマに、平成12年度に実施した「乗用車市場動向調査」の調査結果をまとめた。
わが国の人口は急速に高齢化が進展しつつあり、2010年には免許保有者の4人に1人が60歳以上になると予想されている。また人口ボリュームの大きい「団塊世代」が今後60歳代にさしかかり、定年退職や子供の独立など人生の大きな変革期を迎えることになる。このように量的にも質的にもダイナミックに変化していくであろうシニア層の動向は、今後の乗用車市場における保有・購入・使用などの面にも大きな影響を及ぼすものと考えられる。
本年度の乗用車市場動向調査は、このような背景をもとに「シニアとその予備層を中心とした展望」をテーマに、シニア層の生活意識や車への期待、団塊世代を含むシニア予備軍が将来どのような生活をイメージし、どのような車への期待を持っているのかを把握・比較し、今後の高齢化社会における乗用車市場を展望することを目的に、今後の車保有・選択意識変化の分析を行った。
なお、調査結果の概要は、以下の通り。
<ポイント>
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シニア層やその予備軍の生活意識は、子供の就職、独立などを契機に積極的・活発なものへと変化しており、今後、団塊世代のライフステージ進展に伴って、積極的に老後の生活を楽しむシニアが増加すると考えられる。 |
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将来の生活における車は、日常の足であると同時に、趣味・レジャーの足として積極的・活動的な生活を楽しんでいくために不可欠のものと位置づけられており、「車を持つことで、自分だけの時間・空間を持つことができる」「自分の車があるという満足感」など、単なる移動ツールにとどまらない、車保有のマインド的な効用への期待も強い。 |
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今後乗りたい車としては、「ゆとり感」「運転のしやすさ」への志向をベースに、シニア層では乗っていて疲れないなど「ドライバーに優しい車」が、男性予備軍では「楽しみのための車」「自分らしさが発揮できる車」「ステイタス性のある車」が、女性予備軍では、当面は買い物・用足しなど日常の足としての使用がイメージされているが、将来的には「自分自身の楽しみ・趣味・スポーツやレジャーの足としての車」が、志向されている。
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1.人口構成の変化
団塊世代の加齢に伴って高齢者人口が増加し、60歳以上の人口は2000年の3000万人から、2010年には3800万人に増加、免許保有者の4分の1は60歳以上となり、乗用車市場においてもユーザー層の高齢化が一層進展する。
今後増加率が高いと見込まれている世帯の形態としては、高齢の単身世帯や世帯主がリタイアした夫婦のみの世帯で、これまでのファミリーでの使用や併有を背景とした車保有に加え、さらにそれとは異なった車ニーズ・車志向への対応が求められつつあると言え、また、高齢の女性免許保有者の急増という点でも、新たな対応が求められていると言える。
2.現在の50代、60歳以上層の市場
現在の50代、60歳以上層市場は、
- 車への志向としては、年齢が高まるほど、ハイグレード志向、エンジン性能志向、スタイル志向が低下する傾向にあり、保有車としては、若年層に比べて3BOXセダン、1500ccクラスの割合が高い。
- 50代層の志向は40代層に類似しているが、60歳以上層ではとりわけ、ハイグレード車、スタイルなど付加価値面へのこだわりが弱く、50代層との落差が大きい。
- 用途面では、若年層に比べレジャー使用が少ないが、リタイアに伴って買い物・用足しやレジャー使用が比率の上では急増している。
- 地域別には大・中都市居住層に比べ、小都市・郡部居住層の方が、日常用途向きの「小さい車」への志向が強いが、地域差よりも上記の年代の違いによる差の方が大きい。
- 女性では、夫婦のみの世帯で「軽自動車」の保有が多いが、子供と同居の世帯では、子供との共用を背景に軽自動車以外を選択するケースが多い。
3.シニア層およびその予備軍がイメージする将来の生活
- 将来に対する意識をライフステージ別に見ると、子供が現在就学中の団塊世代は将来の生活に大きな不安を抱いているのに対し、子供が既に社会人となっている世帯や独立した世帯では、今後の生活に比較的明るいイメージを持っており、老後の生活を積極的に楽しもうとの意向が強い。
- 子供の就職・独立を契機とする生活意識変化は大きく、今後、団塊世代での子供の独立が進展するに伴い、活発なシニア層が増加すると考えられる。
- 趣味、レジャー、交際・社交、家族、健康、仕事・社会参加、収入、車保有など、将来の生活を構成する要素の中では、「自分で自由に使える車がある」ことが最も重視されており、特にシニア層では現在の車への支出性向も高く、車保有へのこだわりが強い。
- 生活面では仕事離れの一方、「趣味活動」「夫婦で過ごす時間」「親しい友人・仲間との交流」などへの志向が高まっており、将来の楽しみとしては、車を使用した旅行・行楽が中心となっている。
- シニア層が抱く将来の生活への不安は「寝たきりになる」「物が見えにくくなる」「集中力がなくなる」など肉体的・精神的な衰えに対するものが中心で、収入面に対する不安はむしろシニア予備軍で高い。
4.シニア層およびその予備軍の将来の生活における車との関わり方
- 将来の生活における車は、層を問わず日常の足であると同時に、趣味・レジャーの足としての期待が強く、積極的・活動的な生活を楽しんでいくために不可欠のものと位置づけられている。
- シニア層、その予備軍が期待する車保有最大のメリットは「車を持つことで、自分だけの時間・空間を持つことができる」こと、「自分の車があるという満足感」など、移動の為の道具としてのものではなく、生活のゆとり感や満足感・安心感など精神的なものであり、特にシニア層では「自分の車がある満足感」をメリットと感じる傾向が強い。
- シニア層が運転をやめる目標としている年齢は80歳である。
- 今後も引き続き車を運転していく上での不安としては、視力の低下、運動能力の低下、集中力の低下、判断力の低下などが挙げられている。
5.シニア層の車への期待
- 最後に乗る車としては、シニア層、予備軍ともにゆとり感への志向が根強いが、とりわけシニア層では、運転しやすいこと、乗っていて疲れないことなど「ドライバーに優しい車」が望まれている。
- 一方、予備軍では運転しやすい車への志向と同時に、楽しみのための車志向や、自分らしさが発揮できる車、ステイタス性のある車への志向が見られる。
6.介護車両に対する意識
- 全体では8割近くが、要介護家族が同居するようになった場合、車の必要度が高まると考えている。
- 介護に適した車としては多人数型ステーションワゴン、キャブ型ワゴン、ステーションワゴンが多く挙げられている。
- 夫婦のみのシニア層では4ドアセダンやハッチバックを想定するユーザーも多い。夫婦二人の生活の中での配偶者の介護が意識されており、その配偶者がある程度動けることを想定しているためと考えられる。
以 上
(1)グループインタビュー調査
主な調査項目: ・現在の生活意識、楽しみ
・将来の生活イメージ、期待、不安
・将来の生活における車への期待 等
対象グループ:下記世帯属性の車保有ユーザー(各グループ7名)
グループ1
グループ2
グループ3
対象エリア:首都圏(23区内を除く)
実施期日:平成12年7月
(2)会場集合によるコンジョイント調査およびアンケート調査<調査結果の概要>
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