記者会見

豊田会長挨拶

こんにちは。豊田でございます。東京モーターショーでは、皆さまに大変お世話になりました。この場を借りしまして、お礼をさせていただきます。ありがとうございました。

100万人の目標に対し、130万人のお客様にご来場いただくことができました。目標を掲げた時、自信があったかと言われれば、自信も確信もございませんでした。ただ、100万人の目標値とともに、我々が伝えたかったことは、「自動車産業だけではなく、多くの仲間と共に未来を作っていかないといけない」「そのためにモーターショーを本気で変えていこう」そんな想いがございました。皆さまにも、そんな想いを、とても前向きに伝えていただきました。それが多くの方に届き、「東京モーターショーに行ってみよう」という気持ちになっていただけたのではないかと思います。本当にありがとうございました。

私も、会期の半分くらいは、現場にいることが出来ました。社会科見学の小学生たち、多くの親子連れ、中には、若いカップルがデートなど、今までの東京モーターショーでは見ることのなかった光景が見られました。来場者数の数よりも、これが本当に嬉しい結果であったと思います。また、ほんの一件のツイートですが「モーターショー楽しかった。今迄クルマに興味なかったけど、帰りに中古車を見ていこう」こんなつぶやきも目にしました。こんな結果こそが、私たちの求めていたものなのだと思います。

一方で、展示棟に入るための長い行列や、会場間のバス不足などせっかくお越しいただいたお客様に、ご不便もかけてしまいました。こうした事実についても、メディアの皆さまや、色々な方が、随時、SNSなどでレポートをあげてくださいました。それらをリアルタイムに見れたおかげで、我々も、即時に対策を取ることができたと思います。

最後まで、お客様のストレスをゼロにすることはできませんでしたが、各社が持っているバスをかき集めるなど、お客様が笑顔になれないことが起きた時、自動車メーカー各社がワンチームで、お客様の方だけを向いて即断即決で対応を決めてまいりました。会社の壁を越えて、こうした動きができたからこその、130万人だったとも思います。

次の開催は2年後の2021年。お礼の広告でも書きましたが、「お客様の想像を遥かに上回るような未来」を提案していかないといけません。そんな気概をもって、準備を進めてまいります。来年は、オリンピックパラリンピックの年、東京を舞台にした自動運転の実証実験も始まってまいります。技術を更に高めていき、2年後のモーターショーでは、自動運転車両が会場間を走ったり、開催する町全体が体感ブースになっているような、そんなモーターショーを実現できればと思っております。ご期待いただきたいと思います。

新しい時代の幕開けとなった年でしたが、振返れば、度重なる自然災害や社会問題化する交通事故など、明るい気持ちでばかりはいられない年でもありました。被災された方に、我々は何が出来るのか、何をすべきか、改めて、深く考えさせられた1年であったような気がします。

災害が起きた時、車の給電機能が役に立つ。我々も、頭では、そのことを分かっておりました。ですが、実際に災害が起きたとき「給電できるクルマが、どこにどれだけあるのか」「それを現場で使いこなせる人材は、どれだけいたのか」実は、私自身もプラグインハイブリッドを持っていながら、その車に給電機能が付いていたのか。どうしたら使えたのか、実は分かっておりませんでした。災害時、自動車が、皆さまのお役に立っていくためには、電動車の更なる普及、給電機能の装着率向上もありますが、それと共に、先ずは我々自身も機能を理解し、分かりやすくお伝えしていかないといけないということが大きな反省です。

また、「交通事故ゼロを目指すこと」、これも自動車に関わる全ての人に共通した願いだと思っております。事故ゼロに向けた技術は「どこが先に出す」というような競争する領域ではございません。むしろ、同じ想いを持って、協力し合ってこそ、本当に役に立つ技術がいち早くお届けできると考えております。

個社の話で恐縮ですが、トヨタは50年ほど前に、交通事故死者を弔い、安全を願うためのお寺を建立いたしました。年に一度、販売店や仕入先も、そこに集まり、鎮魂と安全を祈る行事を開催しております。交通事故が話題となった今年、トヨタ以外のメーカーからも、このお寺の意義に共感いただけた方が、慰霊祭に参画いただきました。せっかく同じ場に集まれたということで、自動車メーカー、部品メーカー、保険会社、販売店、多くの関係者で、一堂に介し、事故ゼロの実現に向けて話し合う場も初めて設けることができました。より安全で、安心な、そして、すべての人が移動することを楽しめる、そんなモビリティ社会の実現に向けて、来年以降も、みんなで取り組みを加速させていければと考えております。

モーターショーでは、マツコデラックスさんにも、色々とご協力をいただきました。マツコさんが会場内を徘徊するという番組の企画が始まった時、我々からは、新たな取り組みであるFUTURE EXPOなどを取り上げてもらいたいとマツコさんに申し上げました。しかし、マツコさんは「各社のブースをまわりたい」それも「乗用だけでなく、バイクやトラックも」とおっしゃられたそうでございます。二輪や大型も、と言ってくださったことに対し、私は、とてもうれしく思いました。

我々の産業は、大型もあり、二輪もあり、軽もある。日本の文化や道で育まれてきたからこその特徴であり、これがあったからこそ、世界の様々な地域でお役に立てるモビリティをつくれているのではないかと思っております。各社の電動車を見渡せば、EV、FCV、PHV、HVとフルラインナップが揃っております。どんな地域でも、人々の生活や環境にあった電動車を提供することができる、そして、その普及を通じて、地球のためにも、お役に立っていける、そう考えております。

CASEの流れは、思っている以上に急速に進むかもしれません。しかし、世の中がどう進もうとも、我々の武器が、モノづくりの力であることは変わらないと思っております。リアルの世界を持っているからこそ、様々な産業からも仲間になっていこうと言っていただける。そして、多くの方が笑顔になれる未来に向け、努力をしていけるのだと思っております。2020年も、モノづくりの力を磨き続け、新たな仲間とも一緒になりながら、未来を目指していければと考えております。よろしくお願いいたします。

少し早い年頭あいさつのようになってしまいましたが、年頭あいさつついでに、もう一つだけ言わせていただければと思います。税制についてです。モノづくりを守っていくためにも、税制のことは、更に力をいれてやっていきたいと考えております。先々月、税制は変わりました。ですが、何度も申し上げているとおり、まだまだアメリカの30倍のレベルです。繰り返しますが、我々は、なんとしても日本のモノづくりを守っていきたい。その力は、絶対に、お国のためにも、役に立つ力になってまいります。

CASEが進んでいけば、所有だけでなく、利用、活用と、クルマの存在の幅は広がります。税制も、抜本的な見直しを考えていかないといけません。我々自工会も考えてまいります。ぜひ、そうした議論も進んでいく2020年にしていければと考えております。未来に向けた様々なことを、ワクワクと考えながら、令和最初の正月を迎えていければと思います。皆さま、良いお年をお迎えください。ありがとうございました。

以上

●2019年自工会活動報告(映像)
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