ニュースリリース
2020年度普通トラック市場動向調査について
一般社団法人 日本自動車工業会(会長:豊田 章男)は、2020年度に実施した『普通トラック市場動向調査』の結果をまとめました。
この調査は、普通トラックの保有・購入・使用実態、輸送ニーズの変化と対応や、物流を取巻く市場環境の変化を時系列的に捉え、隔年でアンケートを実施しているものです。
今回はユーザー調査のみを実施し、荷主は深堀りを目的としたヒアリングに変更しました。また以下の把握も併せて行いました。
- ドライバー不足に関する意識・意向
- フルトラクタの需要動向と課題
- 安全に対する意識
- 新型コロナウイルス感染症の影響
調査結果の主な特徴は以下のとおりです。
ユーザー調査より
経営状況
2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響もあってか、運輸業・自家用ともに経営状況は大幅に悪化。売上悪化、運行回数の大幅減、輸送業務の中止・延期等、影響は大きい。
需要動向
国内全体の輸送総量は再び減少傾向もみられる。トラックの増車意向率も減少しているが、運輸業では大規模事業所、経営が好調な事業所での購入意向は高い。
ドライバー不足に関する意識・意向
ドライバー不足・高齢化が進行し、特に大型免許保有者の不足が顕著という厳しい状況。
フルトラクタの需要動向と課題
運輸業、自家用ともにフルトラクタ導入率は1割未満。道路環境整備、共同利用等が課題。
安全に対する意識
運輸業ではドライバーのアルコール・健康管理関連の対策、自家用では積荷保全、ドライバーの健康管理が事故防止対策の上位。
新型コロナウイルス感染症の影響
運輸業ではトラック運行回数減少、輸送業務中止・延期で、稼働状況も低下。ドライバーにも感染対策とそのための手間が発生する等の影響がみられた。
荷主ヒアリングより
ドライバー不足に関する意識・意向
ドライバー不足・高齢化は、荷主側でも憂慮の声があり、さまざまな対策例もみられる。
フルトラクタの需要動向と課題
フルトラクタの利用は荷主側でも運輸業同様の課題がある模様。
新型コロナウイルス感染症の影響
感染対策への苦慮もありつつ、物流の重要性再認識の契機になったとの意見もみられた。
報告書は一般向けに配布するとともに、当会ホームページにも掲載します。
- 自工会ウェブサイト http://www.jama.or.jp/
以上
ご参考
2020年度普通トラック市場調査の概要
1.調査実施概要
ユーザー調査 | ||
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調査地域 | 全国 | |
調査対象 | 普通トラック保有事業所(軽・小型トラック併有事業所を含む) | |
調査方法 | 郵送法 | |
サンプリング | 運輸業 | 建設業、製造業、卸・小売業 |
企業・事業所リストより運輸業 該当企業としてランダムに抽出 |
普通トラック保有企業リストより抽出 | |
有効回収数 | 1013サンプル | 316サンプル |
調査実施期間 | 2020年8月下旬~10月上旬 |
荷主ヒアリング | |
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調査対象 | 大手荷主企業 |
調査業種 | 主として製造業、卸小売業 |
サンプリング | 物流関連誌等からの抽出 |
調査方法 | 訪問・WEB会議システム・メールでのヒアリング |
実施先 | ヒアリング依頼に応諾のあった企業 12社 |
回答者 | 物流部門の担当者 |
調査時期 | 2020年8月下旬~10月上旬 |
2.調査結果概要
◆ユーザー調査より
経営状況
- 2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響もあってか、運輸業・自家用ともに経営状況は大幅に悪化。売上悪化、運行回数の大幅減、輸送業務の中止・延期等、影響は大きい。
- 調査結果からは、運輸業・自家用ともに前回(2018年度)は経営状況に好転の兆しが見えたものの、2020年の新型コロナウイルス感染症流行の影響か、『好転』が前回より低下、『悪化』が大幅に増加し、14年度以降では『好転』が最も低くなった。
- 2年前と比べた荷扱量水準も、運輸業平均で前回100.6%から92.0%へ減少、自家用99.4%から92.5%へ減少し、14年度以降で最も低い水準となっている。
- 新型コロナウイルス感染症による事業所全体への影響では、「売上が減少した」が運輸業で約7割、自家用で6割半ばと多くを占め、運輸業では輸送業務でも「トラックの運行回数が大幅に減った」「輸送業務の中止・延期が発生した」が4割強と大きな影響があったことがうかがえる。
需要動向
- 国内全体の輸送総量は再び減少傾向もみられる。トラックの増車意向率も減少しているが、運輸業では大規模事業所、経営が好調な事業所での購入意向は高い。
- 国土交通省の交通関連統計資料および自動車輸送統計調査年報によると、国内貨物の輸送量については、輸送トン数、輸送トンキロともに、2016年には一旦減少傾向に歯止めがかかったかに見えたが、2017年から2018年にかけて再び減少に転じた。トラックは、輸送トンキロでは2016年以降は横ばいで推移。
- 輸送トンキロ数構成比では、営業用トラックの比率は、2008年から2018年の10年間で10ポイント減少して4割半ば。
- また、普通トラックの新車登録台数は、8.7万台と2015年の水準に減少したが、10トンクラスは、2019年・2020年と4万台を超え、2010年からの過去10年間でも多くなっている。
- 普通トラック保有台数は、2012年を底にゆるやかに増加傾向。
- 今回の調査結果によると、運輸業の事業所におけるトラック保有台数の増減は、直近の過去2年間ではほぼ変わらない状況にある。今後5年後の保有意向については、全体では「増加」が減少、「変わらない」が増加し、現状維持の状況だが、大規模事業所や経営状況が好転した事業所では、「増加」が4~5割と、購入意向が高い。
注:新車需要および新車登録台数は、暦年(1月~12月)の台数について表記
ドライバー不足に関する意識・意向
- ドライバー不足・高齢化が進行し、特に大型免許保有者の不足が顕著という厳しい状況。
- 運輸業では、輸送上の問題点として「ドライバー不足」「ドライバーの高齢化」を半数以上の事業所が挙げている。また、不足の程度を免許区分別でみると、特に大型免許保有者の不足感が高い。そのような中、大型免許で運転できるトラックの増車意向は他の免許区分よりやや多く、今後のさらなる人材確保が懸念される。
- ドライバー確保のため、運輸業では「労働時間の適正化」「給与の引き上げ」「資格取得の支援」「休暇制度の充実」等、労働条件の整備を中心に取り組みが行われている。
- また、運輸業における今後実施したい人材活用施策については、「女性ドライバーの活用」が引き続き高い状況にある。
- また、運輸業では、ドライバー不足解決のために荷主への協力要望として、「荷待ち時間の短縮」や「運行時間帯の最適化」が4割以上と高く、「荷役作業の分業化・分担の明確化」も2割ほどある。
フルトラクタの需要動向と課題
- 運輸業、自家用ともにフルトラクタ導入率は1割未満。道路環境整備、共同利用等が課題。
- 2019年1月に車両全長が25mまで緩和され、大手企業を中心にスーパーフルトレーラーの運行実証実験、導入が進みつつあるが、今回の調査結果では、フルトラクタを導入済みの事業所は運輸業で6%、自家用で2%にとどまり、導入予定なしという事業所は約6割にのぼる。
- フルトラクタ導入にあたっての不安点としては、運輸業で「運行経路が限定される」「けん引免許保有者の確保、免許取得が難しい」「自社だけでの運用が難しい」が上位となっており、導入のハードルとなっている状況。
安全に対する意識
- 運輸業ではドライバーのアルコール・健康管理関連の対策、自家用では積荷保全、ドライバーの健康管理が事故防止対策の上位。
- 交通事故防止安全対策については、運輸業では「乗務前の酒気帯び運転の確認」が最も多く、「ドライバーの健康管理」「乗務前の対面点呼」も上位で、この2点は前回に比べて増加。
自家用では「荷崩れ等の積荷保全徹底」「ドライバーの健康管理」が上位で、それぞれ前回より増加している。 - 安全サポート機器について、運輸業で必要を感じた事例で最も多く挙がったのは「ドライブレコーダー」で、事故の確認、あおり運転の通報等に役立っている。また、「バックアイカメラ・バックモニター」が続いて多く、バック走行時の事故防止に役立っている様子。
- あればよいと思った機器については、「衝突回避・被害軽減ブレーキ/自動ブレーキ」が最も多くみられた。
- また、テレマティクスの利用目的については、運輸業・自家用ともに「安全運転管理」が最も多いものの、現在・今後も利用予定がない事業所は、運輸業で4割、自家用で6割にのぼる。
- 交通事故防止安全対策については、運輸業では「乗務前の酒気帯び運転の確認」が最も多く、「ドライバーの健康管理」「乗務前の対面点呼」も上位で、この2点は前回に比べて増加。
新型コロナウイルス感染症の影響
- 運輸業ではトラック運行回数減少、輸送業務中止・延期で、稼働状況も低下。ドライバーにも感染対策とそのための手間が発生する等の影響がみられた。
- 冒頭の<経営状況>でも触れたとおり、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、運輸業・自家用ともに売上減少の状況にあり、運輸業ではトラック運行回数減少、輸送業務の中止・延期もあり、普通トラックの稼働状況も『繁忙』の割合が2割近く減少し、『休車』は1割弱増加という厳しい状況となった。
- ドライバーの労働環境にも影響があり、運輸業では「マスク・消毒等の衛生用品が不足した」が6割弱、「乗務前アルコール検知器が共用のため念入りな消毒等手間が増えた」が4割弱と高く、保有台数の多い大規模な事業所ほど影響が大きくなる様子もみられた。
◆荷主ヒアリングより
ドライバー不足に関する意識・意向
- ドライバー不足・高齢化は、荷主側でも憂慮の声があり、さまざまな対策例もみられる。
- 荷主ヒアリングでも、高齢化等に伴うドライバー不足を憂慮する声が各業種から聞かれ、外国人ドライバーの受け入れも必要という意見もあった。
- また、課題解決にあたっては、身体的負荷の高い荷役作業や運転マナー面等からくるドライバーイメージの改善が必要との意見も聞かれた。
- 解決への具体的な対応例としては、荷主企業ではバース管理システムの導入等で対応しているケースがあった。また、積載率向上や倉庫作業の省人化の取り組みや意見・提案の中に、ドライバーの荷役作業等の負荷軽減につながるもの(マテハン機器導入、オートフロアー車両等)もみられた。運転マナーについては、中・小型車のリミッター装着義務付け、車間距離抑制機能等、仕組みによるルール遵守という提案があった。
フルトラクタの需要動向と課題
- フルトラクタの利用は荷主側でも運輸業同様の課題がある模様。
- 荷主企業でのフルトラクタ利用については、輸送量の多い食品・飲料等の製造業で取り組み事例・意向が一部あったものの、輸送量が多くない、拠点・道路のキャパシティの制約等で利用が難しいとの意見があった。利用促進にあたっては、運輸業と同様、道路環境面、共同利用等が共通課題といえる。
新型コロナウイルス感染症の影響
- 感染対策への苦慮もありつつ、物流の重要性再認識の契機になったとの意見もみられた。
- 荷主企業における新型コロナウイルス感染症の影響として、特に卸・小売業、食品製造業等から、ドライバーのマスク不足や感染対策への苦慮、感染者発生拠点への配送拒否等が生じた例が聞かれた。
- 一方で、コロナ禍がきっかけになり、改めて物流の重要性が広く認識されたという声もあり、それに伴ってトラック輸送・物流の根本的な課題が再認識されている様子がうかがえた。
- 具体的には、ドライバー負荷と輸送品質のバランスの課題、自主荷役をはじめとした運輸業と荷主間の課題、さらに荷主同士の商慣行・ルール等、諸課題が輸送上の負荷につながっている。
こうした課題を受け、『持続可能な物流』の実現に向けた取り組みを検討する企業もみられた。
以上