ニュースリリース

2022年度普通トラック市場動向調査について

一般社団法人 日本自動車工業会(会長:豊田 章男)は、2022年度に実施した『普通トラック 市場動向調査』の結果をまとめました。

この調査は、普通トラックの保有・購入・使用実態、輸送ニーズの変化と対応や、物流を取巻く市場環境の変化を時系列的に捉え、隔年でアンケートを実施しているものです。前回2020年度ではヒアリングを実施した荷主調査は、2018年度と同様にアンケートとして実施しました。
また、時系列での分析と併せて以下の把握も行いました。

  1. ドライバー不足に関する意識・意向
  2. 安全に対する意識
  3. 環境意識と次世代環境車
  4. 先進技術への期待と不安
  5. 社会情勢の影響

調査結果の主な特徴は以下のとおりです。

ユーザー調査より

  • 経営状況
    自家用ではコロナ禍からの回復の兆しがみえる一方、運輸業の半数では、売上・業務量ともに新型コロナ前より減少し、厳しい状況が続く。エネルギー価格高騰も経営に大きく影響。
  • 需要動向
    国内全体の輸送総量は、新型コロナの影響により20年に大きく減少したが、運輸業の大規模事業所、経営が好調な事業所でのトラック購入意向は高い。
  • ドライバー不足に関する意識・意向
    2023年・2024年問題の取り組みが進みつつも、高速活用増、運賃・給与引き上げといった眼前の課題対応が中心。
  • 安全に対する意識
    運輸業では対面点呼・酒気帯び確認等、健康管理を中心とした対策で、IT関連機器の導入検討も。自家用では乗務前の酒気帯び確認実施率が大幅に増加。
  • 環境意識と次世代環境車
    エコドライブ、低燃費車両はユーザー・荷主ともにニーズあり。カーボンニュートラル対応となるハイブリッド車導入意向は、運輸業で中型の2割強にとどまる。
  • 先進技術への期待と不安
    DX対応については、車載機器が中心。また、エコドライブは施策実施率4割に対して、システム導入率2割強にとどまる。荷主では『先進的な安全対策』より、『運賃コスト』優先が上回り、得意先・消費者への価格転嫁が難しい状況。
  • 社会情勢の影響
    エネルギー価格、原材料価格の高騰は、トラックユーザーや荷主にも大きく影響。

報告書は一般向けに配布するとともに、当会ホームページにも掲載します。

以上

ご参考

2022年度普通トラック市場調査の概要

1.調査実施概要

  ユーザー調査
調査地域 全国
調査対象 普通トラック保有事業所(軽・小型トラック併有事業所を含む)
調査方法 郵送法
サンプリング 運輸業 建設業、製造業、卸・小売業
企業・事業所リストより運輸業
該当企業としてランダムに抽出
普通トラック保有企業リストより抽出
有効回収数

952サンプル

280サンプル

調査実施期間

2022年8月下旬~10月上旬

  荷主調査
調査地域 全国
調査対象 建設業、製造業、卸・小売業
調査方法 郵送法
サンプリング 従業員100人以上の事業所をランダム抽出
有効回収数 256サンプル
調査実施期間 2022年8月下旬~10月上旬

2.調査結果概要

[経営状況]
  • 自家用ではコロナ禍からの回復の兆しがみえる一方、運輸業の半数では、売上・業務量ともに新型コロナ前より減少し、厳しい状況が続く。エネルギー価格高騰も経営に大きく影響。
    • 今回の調査結果では、最近の経営状況が『好転』した事業所は、運輸業では前々回(18年度)から減少傾向が続く一方、自家用では前回(20年度)より増加。
      2年前と比べた荷扱量水準は、運輸業平均で前回92.0%から93.0%と同水準で推移しているが、自家用は92.5%から99.2%と増加。
      運輸業では、現在のトラック稼働状況の『繁忙』の割合が前回より増加しているが、経営状況好転には至っていない様子がうかがえる。
    • 新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」)発生前と現在との業況比較では、会社全体での売上、輸送業務の件数、輸送量、トラックの運行回数ともに、運輸業の半数前後が「減った」と回答しており、自家用に比べてこれらの割合が高い。20年度に新型コロナ流行と重なり悪化した経営状況からの立ち直りについては、運輸業では厳しい状況が続いている。
    • 世界的な社会情勢等により、この1年のエネルギー価格は16年以降でみると最も高い水準にある。調査結果では、この1年ほどで「エネルギー高騰で燃料費が増大、経営に影響があった」という回答や、トラック輸送上の問題点でも運輸業・自家用ともに「燃料費の値上がり」がそれぞれ最多であった。
      荷主でも、トラック輸送上の問題点として「燃料費の高騰」が前回(18年)に比べて大幅に増加し、「輸送経費の増加」に次ぐ高さとなっている。
[需要動向]
  • 国内全体の輸送総量は、新型コロナの影響により20年に大きく減少したが、運輸業の大規模事業所、経営が好調な事業所でのトラック購入意向は高い。
    • 国土交通省の交通関連の統計資料によると、国内貨物の輸送量については、輸送トン数、輸送トンキロともに、16年には一旦増加に転じたが17年以降は減少、さらに20年には新型コロナの影響により大きく減少した。21年は増加に転じたが、19年以前の水準には届かず。
      トラックも同様の傾向。
      輸送トンキロ数構成比では、営業用トラックの比率は、10年から20年の10年間で4ポイント減少して5割弱。
    • 普通トラックの新車販売台数は、19年からは減少傾向となり、特に22年は5.7万台と過去10年間で最低台数となった。4トンクラス、10トンクラスでは21年と比べて1万台前後減少した。
      普通トラック保有台数は、12年を底にゆるやかに増加傾向が続く。
    • 調査結果では、運輸業での現保有車の購入形態は「代替」が中心ではあるものの、18年までと比較して、20年以降は「代替」が減少、「増車」としての購入に増加傾向がみられた。
      また、運輸業の事業所のうちトラック保有台数の多い事業所や経営状況が好転した事業所では、直近2年間で事業所全体での保有台数が「増えている」割合、今後5年間の購入意向割合も高い。
    注:
    交通関連の統計資料は「自動車輸送統計年報」「鉄道輸送統計年報」「内航船舶輸送統計年報」「航空輸送統計年報」。
    新車需要および新車登録台数は、暦年(1月~12月)の台数について表記。
[ドライバー不足に関する意識・意向]
  • 2023年・2024年問題の取り組みが進みつつも、高速活用増、運賃・給与引き上げといった眼前の課題対応が中心。
    • 運輸業・自家用ともに、輸送上の問題点として「ドライバー不足」「ドライバーの高齢化」が引き続き上位にあがっている。
      このような中、働き方改革関連法の改正・施行による人件費のコストアップ、ドライバーの収入減等により、さらなるドライバー不足が懸念される『2023年・2024年問題』については、運輸業の4割弱で「現在取り組みを進めている」、4割半ばが「未着手だが今後進める予定」と回答。多くの事業所で対応が進んでいるが、現在の取り組み内容は、「高速道路の活用を増やす」「荷主への運賃値上げの交渉」「ドライバーの給与引き上げ」等が上位となっており、IT・車両導入等よりも、直面する課題への対応が中心となっている。
    • 荷主側では、2023年・2024年問題の影響として「トラック輸送運賃の上昇」が6割で最も高い。
[安全に対する意識]
  • 運輸業では対面点呼・酒気帯び確認等、健康管理を中心とした対策で、IT関連機器の導入検討も。自家用では乗務前の酒気帯び確認実施率が大幅に増加。
    • 交通事故防止安全対策は、運輸業では「乗務前の酒気帯び確認」が9割と最多で、対面点呼や健康管理を中心としたドライバー管理による安全対策も7割以上で取り組みがある。自家用では22年4月に義務化された「乗務前の酒気帯び確認」の割合が前回より大幅に増加している。
    • 安全サポート機器の必要性を感じたヒヤリハット事例では、「後方の衝突」「前方の割り込み」等、前・後方関連の事例が運輸業で4割前後と多い。
    • 運輸業でのIT関連機器等の今後導入(拡充)検討上位は、点呼関連とアルコールインターロックとなっており、運輸業ではドライバーの健康・行動管理面での安全対策機器導入が見込まれる。自家用では酒気帯び確認の対応は急速に進んだ一方、アルコールインターロックの今後導入(拡充)意向は1割未満と低い。
[環境意識と次世代環境車]
  • エコドライブ、低燃費車両はユーザー・荷主ともにニーズあり。カーボンニュートラル対応となるハイブリッド車導入意向は、運輸業で中型の2割強にとどまる。
    • 運輸業・自家用ともに実施している環境施策の上位は「エコドライブの実施・管理」で、荷主が運輸業に現在指定している環境対策でも上位。荷主が今後指定したい対策では「カーボンニュートラルへの対応」「低燃費車両使用の指定」が上位で、低燃費車両については、運輸業・自家用でも今後の使用意向は最多。今後の低燃費車両へのニーズは、ユーザー・荷主ともに共通している。
    • 環境配慮型車両の導入意向の割合は、中型ハイブリッド車が運輸業で2割強、自家用で3割だが、「(導入)時期は未定」が運輸業で約半数、自家用で6割強と、意向がありつつも導入時期までの具体的な検討に至っていない状況。
    • 導入の課題としては、「車両価格が高い」が運輸業・自家用ともに8割前後と高い。「運行中に充電できる施設が少ない」「航続距離が短い」も上位で、現状、導入時の想定用途は「中・近距離の幹線輸送用」が中心となっている。
[先進技術への期待と不安]
  • DX対応については、車載機器が中心。また、エコドライブは施策実施率4割に対して、システム導入率2割強にとどまる。荷主では『先進的な安全対策』より、『運賃コスト』優先が上回り、得意先・消費者への価格転嫁が難しい状況。
    • 運輸業・自家用ともに、自動運転・隊列走行のメリットは「ドライバー不足解消」「事故の減少」、デメリットは「システムの誤作動・故障」「ドライバーの居眠り・注意力の低下」が上位。「車両価格・維持費の上昇」は運輸業・自家用とも前回から増加傾向。荷主では不安点として「車両価格上昇による運賃値上げ要請」が最多となっている。
    • 運輸業でのDX対応(IT関連機器・システムの導入状況)は、「ドライブレコーダー」「ETC2.0」「デジタルタコグラフ」が半数~8割で、車載機器が上位。運行管理では「車両位置確認システム」の導入率が3割半ば。安全運転支援システムでは、「エコドライブの実施・管理」は運輸業で4割が実施しているが、「エコドライブ管理システム」の導入は2割強という状況。
      荷主が運輸業者に使用してほしい機器は、「ドライブレコーダー」「車両位置確認システム」「貨物追跡システム」のニーズが高い。このうち、上位2項目は運輸業でも導入率は上位だが、「貨物追跡システム」の運輸業での導入率は低い。
    • 荷主が運輸業者に業務依頼する際に、『先進的な安全対策』『運賃コスト』のどちらを優先するかは、『運賃コスト』が上回る結果となった。安全対策に伴う運賃への価格転嫁については、「得意先や消費者への価格転嫁は難しい」との回答が荷主の半数近くを占める。
[社会情勢の影響]
  • エネルギー価格、原材料価格の高騰は、トラックユーザーや荷主にも大きく影響。
    • 運輸業では、この1年で「エネルギー価格高騰で燃料費が増大、経営に影響があった」(7割強)という他にも、「新型コロナによる半導体不足等の影響で輸送機器の納品に影響」(3割半ば)、「物価上昇分を運賃に転嫁した(運賃値上げ)」(2割弱)が上位に挙がった。
      「新型コロナによる半導体不足等の影響で輸送機器の納品に影響」が自家用でも2割弱ほどあった。国内外での新型コロナの流行拡大時期には、製造業の生産調整・稼働停止も相次ぎ、半導体不足等による輸送機器の納品への影響が、ユーザー全体でも一定数みられた形となっている。
      また、エネルギー価格高騰の影響や物価上昇分の価格転嫁等、経済面の回答割合は、トラック保有台数の多い事業所ほど高い。
    • 荷主では、業績好転の理由としては「コロナ禍からの回復」が最も多いが、一方で業績が悪化した事業所では「コロナ禍による影響」を上回って「原材料価格の上昇」が最も高く、新型コロナに加えて物価上昇が業績不調の主な要因となっている。

以上

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