ニュースリリース
2023年度二輪車市場動向調査について
一般社団法人日本自動車工業会(会長:片山 正則)は、2023年度に実施した二輪車市場動向調査の結果を取りまとめました。
本調査は、新車購入ユーザーにおける特性や使用状況、今後の購入や保有の意向などを隔年毎に調査し、需要の質的変化の見通しに役立てようとするものであります。
郵送調査に加えFGI調査を実施することで、定量、定性両面からユーザー動向を明らかにしました。
I-1.新車購入ユーザー(時系列)調査結果
- 二輪車需要台数は、2015年度以降30万台水準で推移したが、2020年度に新型コロナの感染拡大による「三密」回避意識の高まりなどから増加に転じ、2021年度以降は40万台を超えている。
- 保有台数の推移は緩やかな減少傾向が続いていたが、2022年度は微増となっている。
- 平均年齢は55.5歳、40代以下の割合は26%である。男性は平均55.7歳、女性は平均54.0歳となっている。
- 週間使用日数は前回平均の3.3日から3.1日に減少し、月間走行距離は平均239kmから235kmへ微減した。
- 購入形態は52%が買い替え(前回55%)、再購入が19%(前回20%)、買い増し16%(前回14%)、新規12%(前回11%)と、買い替えがやや減少し、買い増しがやや増加している。
- 購入した二輪車へ期待する点はスクーターやビジネスはコストや移動の利便性、オンロードやオフロードは走る心地よさや楽しさ、解放感である。
- 二輪車継続乗車意向の変化をみると、「継続乗車意向あり」が今回86%と前回(85%)から微増している。
I-2.トピック調査結果
- メーカー専売店、メーカー正規販売店に対しては、「店内の広さ」、「バイク陳列の整然さ」など店舗への評価が高い。
- ウェアやヘルメットの購入先は、「二輪車用品専門店」「ネット通販」が中心である。
- 二輪車貸出サービスの利用経験者は全体の1割程度で、ほとんどのユーザーは利用経験がない。しかし多くのユーザーは、「二輪車購入のキッカケになる」との考えを持っており、理由として「複数の二輪車を比較検討できる」などをあげている。
- EV二輪車の認知度は2021年度調査からさらに向上している。一方、EV二輪車の経験者は前回調査からも増えておらず、また購入検討意向比率も2021年度と同レベル(検討意向比率12%)にある。EV二輪車購入検討のための条件は、「購入価格の低下」「走行距離の延長」「充電の簡易化・時間短縮」が上位である。
- 三ない運動の認知率は5割程度である。50・60代ユーザーにおける認知率が高い。
II.FGI調査結果
- 二輪車を知るきっかけとして、特に若年層や女性は家族や友人・知人からの紹介の影響が大きい。
- 二輪車に関する情報源としては、メーカー公式HPと動画サイト・SNSとで場面に応じた使い分けがなされる。
- 胸部プロテクターは、排気量が大きいほど、移動距離が長いほど、保有・着用するユーザーが多い。
- 洋用品は二輪車用品専門店のほか、ホームセンターや量販店、インターネット通販などを通じて購入している。
- ツーリングの目的は、「走ること」そのものよりも、「温泉」や「景勝地訪問」など、観光自体を楽しむための手段として位置づける傾向が見られる。
- ツーリングに必要な荷物を格納するため、一定以上の大きさを有する収納用ボックスがあると便利である。
- 中高齢層は、取り回しを考慮して適切なサイズを志向する。
- 二輪車貸出サービスは、購入検討時に対象候補モデルの比較検討の際に有効とみられる。
- EV二輪車の購入意向は低く、その理由として、音や振動を楽しむことが出来ない点があげられる。
- メーカーによる環境問題への取組手法は、EV二輪車の普及促進に加えて既存モデルの燃費改善や、企業としてのCO2削減貢献活動などをより進めるべき、との意見がみられる。
- 特に都市部ほど、駐車場に関し困った経験を持つユーザーが増える。
- その他、若年層や女性の参入障壁を下げる努力の推進、旧車フォローアップへの取組などへの意見も見られる。
III.今後に向けて
- 定量調査及びFGI調査結果を踏まえ、今後二輪車業界及びメーカーが留意すべき示唆点と、二輪車市場活性化に向けた二輪車業界、メーカーが取り組むべき方針について、整理を行った。
なお、上記の特徴ならびに詳細については報告書をご参照ください。
報告書は当会ホームページにも掲載します。
以上
ご参考
2023年度二輪車市場動向調査の概要
1. 調査設計
(1) 郵送調査
調査手法 | 国産二輪車:郵送調査法(書面による回答とWebによる回答併用) 輸入二輪車:インターネットモニターWeb調査 |
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調査地域 | 全国 |
調査対象 | 国産二輪車:2022年6月~2023年5月の新車購入者(国内4メーカー ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキ) 輸入二輪車:2020年6月~2023年5月の新車購入者 |
対象者抽出 | 国産二輪車:調査応諾者より、タイプ別×排気量別の市場構成に合わせ対象者を割当、抽出 輸入二輪車:インターネット調査モニターより調査対象条件該当者を抽出 |
調査期間 | 2023年8月30日(水)~2021年9月22日(金) |
サンプル数 | 4,415s |
(2) グループインタビュー調査
調査対象 | 二輪車保有・利用ユーザー |
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調査手法 | FGI(フォーカスグループインタビュー)調査(リモートにて実施) |
調査地域 | 全国 |
グループ | 下記6グループ(1グループ4名)
①大型二輪免許(排気量無制限)・モデルを保有するユーザー
②普通二輪免許(400ccまで)・モデル(除小型限定普通二輪免許)を保有する、中高年層(40歳以上)ユーザー ③普通二輪免許(400ccまで)・モデル(除小型限定普通二輪免許)を保有する、若年層(39歳以下)ユーザー ④小型限定普通二輪免許(125ccまで)・モデルを保有する、中高年層(40歳以上)ユーザー ⑤小型限定普通二輪免許(125ccまで)・モデルを保有する、若年層(39歳以下)ユーザー ⑥原付免許(50ccまで)・モデルを保有するユーザー |
調査期間 | 2023年11月11日(土)、15日(水)、19日(日) |
調査時間 | 1グループにつき、およそ1.5時間 |
2−1.新車購入ユーザー調査結果
1) 二輪車をめぐる諸環境
- 二輪車需要台数は、2015年度以降30万台水準で推移したが、2020年度に新型コロナの感染拡大による「三密」回避意識の高まりなどから増加に転じ、2021年度以降は40万台を超えている。
- 保有台数の推移は緩やかな減少傾向が続いていたが、2022年度は微増となっている。
2) 二輪車ユーザーの特性
- 性別は男性が中心で85%を占め、この傾向は変わらない。
- 平均年齢をみると55.5歳で、40代以下の割合は26%。男性は平均55.7歳、女性は平均54.0歳となっている。
- オンロードの中では251cc~400ccユーザーの平均年齢が50.8歳と最も若い。
3) 使用状況
- 週間使用日数は前回平均の3.3日から3.1日に減少し、月間走行距離は平均239kmから235kmへ微減した。
- タイプ別では、オンロードとオフロードの大排気量モデルで月間走行距離が他より長い点が特徴である。
4) 需要構造の変化
- 購入形態は52%が買い替え(前回55%)、再購入が19%(前回20%)、買い増し16%(前回14%)、新規12%(前回11%)と、買い替えがやや減少し、買い増しがやや増加している。
5) 購買行動
- 二輪車以外の乗り物との比較検討率は14%と前回(13%)から微増した。
- 購入車の情報源はWebと販売店の実物と動画サイトが中心だが、若年層では家族からの話やSNS、高齢層は販売店での実物と店員の話が高い。オンロードとオフロードは二輪車専門誌も高い。
6) 二輪車への期待と使用評価
- 購入した二輪車へ期待する点は、スクーターやビジネスはコストや移動の利便性、オンロードやオフロードは楽しさや解放感、爽快感にある。
- 出先や、自宅周辺などにおいて「駐車で困った経験」は全体で37%。特に東京23区では67%など都市部ほど高い。出先で困る割合が自宅や月極駐車場に比べ高い。
7) 二輪車の楽しみ方と情報収集
- オンロードユーザーを中心にツーリング経験率は高く、特に宿泊を伴うものへの意向が高い。オンロードユーザーはミーティング・オフ会、サーキットの体験走行などへの意向も高い。
- 洋用品の所有意向はライディングウェア、グリップヒーター、インカムへの意向が高い。
- 二輪車を楽しむための情報源としては動画や二輪車専門誌、Webや口コミ、SNSのほか会員サービスやイベントがあげられる。男性50代以下とオンロードユーザーでは口コミとSNSの活用も特徴的である。
8) 今後の意向
- 二輪車継続乗車意向の変化をみると、「継続乗車意向あり」が今回86%と前回(85%)から微増している。
- 男性20代~50代は、「今後もずっと二輪車に乗り続けたい」割合が高い一方、男性60代は「10年以内に乗らなくなる」と「あと数年でやめるつもり」を合わせた割合が18%、同70代以上は42%と高くなる。
- 環境変化別二輪車保有・乗車意向をみると、「保有を中止する」が最も高いのは「駐車スペースがなくなった時」で53%と最も高く、次いで「経済的に余裕がなくなったとき」が46%となっている。
2-2.トピック調査結果
1) 購入先販売店の評価
- メーカー専売店、メーカー正規販売店に対しては、「店内の広さ」、「バイク陳列の整然さ」など店舗への評価が高い。
- 一方「整備・修理などの技術力」への評価がやや低くなっている。
2) 点検・整備、カスタマイズ
- 点検・整備、カスタマイズともに購入先への入庫が最も多く、メーカー専売店、正規販売店で購入ユーザーの購入先入庫率は、点検・整備で7割、カスタマイズで5割と多い。
- メーカー専売店、正規販売店の入庫理由はともに「店舗スタッフの対応の良さ」がトップである。このほかメーカー専売店では「メンテナンスパック」が入庫吸引の強みとなっている。
3) ウェア、ヘルメット
- 購入先は、「二輪車用品専門店」「ネット通販」が中心である。
- 購入重視点は、ウェア、ヘルメットともに「デザイン」「価格」が上位であるほか、ウェアは「機能」、ヘルメットは「安全性」も重視される。
4) イベント参加状況
- 7割以上のユーザーはイベントの参加経験がない。
- 二輪車ユーザーの今後参加したいイベントは「二輪車の工場見学」「新車の試乗」「洋用品、関連機器のイベント」「ライディングスクール」などである。
5) 二輪車貸出サービス
- 利用経験者は全体の1割程度で、ほとんどのユーザーは利用経験がない。
- しかし多くの二輪車ユーザーは、「二輪車購入のキッカケになる」との考えを持っており、理由として「複数の二輪車を比較検討できる」などをあげている。
6) 新型コロナの影響
- 二輪車使用の変化では、これまでと比べ「1人でのツーリング」「日帰りのツーリング」が増加している。
- コロナ感染拡大の二輪車購入への影響は、二輪車ユーザーの2割が「影響有」と回答。特にオンロード、オフロードユーザーで多い。
7) EV二輪車への意向
- EV二輪車の認知度は2021年度調査からさらに向上している。
- 一方、EV二輪車の経験者は前回調査からも増えておらず、また購入検討意向比率も2021年度と同レベル(検討意向比率12%)にある。
- EV二輪車購入検討のための条件は、「購入価格の低下」「走行距離の延長」「充電の簡易化・時間短縮」が上位である。
8) 「三ない」運動
- 認知率は5割程度である。運動が盛んな時期にエントリー層であった現在の50・60代ユーザーにおける認知率が高い。
- 免許取得や二輪車購入への影響については、認知度と同様、50代ユーザーの多くが「影響有り」と回答している。
3. FGI調査結果
1) 定量調査項目を中心とした調査結果について
- 特に若年層や女性は家族や友人・知人からの紹介の影響が大きい。
- メーカー公式HPと動画サイト・SNSは場面に応じた使い分けがなされる。
2) トピックテーマについて
①二輪車販売店へのユーザー意識、ユーザーのバイクライフや思考の分析
- 胸部プロテクターは、排気量が大きいほど、移動距離が長いほど、保有・着用するユーザーが多い。
- 洋用品は二輪車用品専門店のほか、ホームセンターや量販店、インターネット通販などを通じて購入している。
- 「走ること」そのものよりも、「温泉」や「景勝地訪問」など、観光自体を楽しむための手段として位置づける傾向が見られる。
- ツーリングに必要な荷物を格納するため、一定以上の大きさを有する収納用ボックスがあると便利である。
- 中高齢層は、取り回しを考慮して適切なサイズを志向する。
- 二輪車貸出サービスは、購入検討時に対象候補モデルの比較検討の際に有効とみられる。
②EV二輪車に対する意識、ニーズ、ユーザーの受容性の分析
- EV二輪車の購入意向は低く、その理由として、音や振動を楽しむことが出来ない点があげられる。
- EV二輪車の普及促進に加えて既存モデルの燃費改善や、企業としてのCO2削減貢献活動などにより取り組むべき、との意見がみられる。
3) その他二輪車業界への意見
- 特に都市部ほど、駐車場に関し困った経験を持つユーザーが増える。
- 若年層や女性の参入障壁を下げる努力の推進、旧車フォローアップなどへの意見も見られる。
4.定量調査・FGI調査結果から得られる示唆点
- 定量調査及びFGI調査結果を踏まえ、今後二輪車業界及びメーカーが留意すべき示唆点について、下記の通りきっかけや楽しみ方、情報受発信、EV二輪車など8つの項目ごとに整理を行う。
①きっかけ | 新規購入及び増車の理由は「二輪車を趣味として楽しみたい」が最も多い。 二輪車乗車のきっかけは、家族や友人・知人からの影響が主であり、特に若年層や女性といったユーザーにおいてその傾向がより顕著である。 |
②販売店 | ユーザーにより、また保有モデルサイズにより、店舗や品揃え、スタッフのほか、技術力、自宅からの距離、奇麗さ、親しみやすさなど、求める理想像は様々である。 |
③楽しみ方 | ツーリングの楽しみ方は、従来の「乗ること」に傾斜した楽しみから、アウトドアや温泉・景勝地めぐりなど観光の要素を組み合わせた楽しみ方に広がりを見せている。 |
④二輪車貸出サービス | 二輪車貸出サービスは購入前の試乗やツーリングでの利用など、様々な活用方策が想定される。 |
⑤安全対策 | 小型モデルのユーザーの多くは、買い物など近距離の移動を主に利用しているので、安全に対する意識が低く、胸部プロテクターの必要性を感じていない。 |
⑥EV二輪車 | EV二輪車に対する認知はなされているが、特にガソリン車が持つ特有の音や振動に魅せられるユーザーも少なくない。 |
⑦駐車場問題 | 特に都市部を中心に、駐車場の供給不足等に関する課題は未だ残る。 |
⑧情報受発信 | YouTubeをはじめとする動画サイトやSNSからの情報を重視する傾向が強まる一方、特に購入時に必要となる正確な情報、比較可能な情報はメーカー公式HPなどから得る傾向も根強い。 |
5.今後の二輪車市場活性化に向けた取組み方針
- 定量調査、FGI調査の結果を踏まえ、今後の二輪車市場活性化に向けた二輪車業界、メーカーが取り組むべき方針について、下記の通り、二輪車の販売促進・魅力向上への取組み、社会環境の向上・改善への取組み、効果的な情報発信実現への取組みごとに、計8項目にて整理する。
以上