ニュースリリース
2024年度小型・軽トラック市場動向調査について
一般社団法人日本自動車工業会(会長:片山 正則)は、2024年度に実施した『小型・軽トラック市場動向調査』の結果をまとめました。
本調査は、小型・軽トラックユーザーの保有・購入・使用実態の変化を時系列的に把握し、今後の市場動向を探っていくことを目的としております。
また今回は、カーボンニュートラルに向けた社会の流れを受けた次世代環境車や電気自動車に対するユーザー意識の変化、燃料価格高騰やドライバー不足が及ぼす輸送への影響と対応策等、小型・軽トラック市場を取り巻く社会的な環境変化の影響、及び、小型・軽トラックに対する新しいニーズを把握すべく、以下3項目をトピックとして取り上げ、分析を行いました。
- 環境配慮型車両に関する意識
- 2024年問題・物流に関する動向
- 農家におけるトラック・バン
調査結果の主な特徴は以下のとおりです。
- 保有状況と変化の背景
- 小型・軽トラック・バンの保有台数は1201万台で2023年より減少。車種別では、小型トラック・軽トラックが2023年より減少。
- 直近2年間のトラック・バン保有台数は、運輸業で「保有減」事業所が「保有増」事業所を約1割上回る。
- 需要構造の実態
- 小型・軽トラック・バンの新車販売台数は、新型コロナウィルス感染拡大の影響で2020年に大きく減少。2023年まで緩やかに回復したものの、2024年は一部メーカーの認証不正問題に伴う出荷停止等が影響し再び減少。
- 直近2年間のトラック・バン購入率は、全体では1割で2022年度から変わらず。運輸業では1割半ばで、2022年度の約4割より大きく減少。
- 使用実態
- 使用パターン(仕事、私用)については、小型トラック・バンでは2018年度以降「仕事・私用兼用」とするユーザーが増加し2割。軽トラック・バンでは「仕事専用」とするユーザーが2022年度より増加し約5割。
- 平均月間走行距離は、仕事利用では2022年度より長距離化。私用利用では2022年度から変化なし。私用専用ユーザーの平均月間走行距離は仕事利用ユーザーの約半分。
- 仕事利用の運行形態は、いずれの車種も「往復型」が最も高く、特に小型トラックの<運輸業>では2022年度より増加。
- 私用利用での用途については、「日用品の買物(食料品・雑貨など)」に使うユーザーが約6割で最も多く、また「園芸・農作業」に使うユーザーが約4割、「通勤・通学」に使うユーザーが約3割で2022年度と同じだが、軽バン(キャブバン、ボンネットバン)は「休日型レジャー(ピクニック・ドライブ・スポーツ等)」「キャンプなどのアウトドアレジャー」に使うユーザーが2割弱まで増加している。
- 今後の購入・保有意向
- 次期買い替え意向車は、小型トラック・バン保有ユーザーでは「同タイプ・同クラス歩留まり」意向が最も多い。軽トラック・キャブバン保有ユーザーでも「同タイプ・同クラス歩留まり」意向が最も多いが、軽ボンバンは「他タイプ移行」の意向が最も多く5割となっている。
- 今後1〜2年間の保有増減の見通しをみると、運輸業では保有増の見通しをしている事業所が2022年度より減少、運輸業以外では変わらない見通しをしている事業所が9割以上となっている。
- 今後1〜2年間の物資輸送量の見通しをみると、運輸業以外では「増加する」が「減少する」を上回る。一方、運輸業では「増加する」が2022年度より減少し、「減少する」が「増加する」を上回る。
- 安全技術・自動運転等次世代技術に関する意識
- 6割弱の事業所が自動車の安全性に関心を持ち、5割半ばの事業所が購入時に安全性を重視している。従業員規模が大きい事業所ほど、安全性への関心が高い。
- 有償でも装着したい先進安全技術では「衝突被害軽減ブレーキ」「歩行者の探知・保護支援システム」「誤発進防止システム」が上位にあがり、運輸業では「ドライバー異常警報システム」も上位にあがる。
- 自動運転に対する意識では、全体では自動運転車の導入意向事業所は2割弱だが、従業員規模別でみると30人以上の事業所では3割を超える。
- 自動運転技術に期待する事業所は、全体では6割強で、従業員規模別でみると300人以上の事業所では約9割に達しており、具体的には「ドライバーの負担が軽減」や「安全性が高まる」技術を望む声が上位にあがる。
- 環境配慮型車両に関する意識
- 月々の燃料代の負担感では、「負担を感じている(非常に+やや)」事業所が8割。環境問題に関する考え方でも「多少価格が上がっても低燃費の車を選ぶ」「環境への影響を考え荷下ろしの時にアイドリングをやめる」「省資源を意識し燃費効率の良い経済速度で走るようにする」が上位にあがる。また、次世代環境車に対する購入意向については、すべての車種において「ハイブリッド車」が最も高く、次世代環境車の導入検討理由として「燃料価格変動の影響を受けにくくなる」が上位にあがる一方、懸念点は「車両価格が高い」が最も高い。
- 電気自動車(EV)の導入については、補助金が「無くても検討する」事業所は2%にとどまり、補助金が「50万円まで」だと検討する事業所が2割半ば、「50万円超~100万円」だと検討する事業所が3割弱となる一方で、「いくら補助金があっても検討しない」事業所も3割半ばとなっている。
- 電気自動車(EV)超小型モビリティは5割半ばの事業所が認知しており、3割が購入や導入、利用を検討。「小回りが効いて便利」「駐車スペースが小さい」「運転のしやすさ」などサイズや取り回しに対する期待が高い。
- 電気自動車(EV)小型トラックの積載量減については3割強が認知、4割が購入に影響あり。
- 安全意識と先進安全技術
- 自動車の安全性に約8割の事業所が関心あり。運輸業では購入時重視が約8割と18年度調査から増加。有償装着意向は「衝突被害軽減ブレーキ」「歩行者の検知・保護支援システム」「誤発進防止システム」が高い。事業所調査において、自動運転技術への期待度・導入意向ともに18年度より増加。
- 2024年問題・物流に関する動向
- 2024年問題の影響は、全体では「ドライバーの採用が難航」「車両の買い替えや増車」「事業所の売上、利益の減少」「ドライバーの収入減少」が上位にあがり、運輸業では「事業所の売上、利益の減少」「ドライバーの拘束時間の減少による供給力不足」「ドライバーの採用が難航」が上位にあがる。なお、運輸業以外よりも運輸業の方が影響は大きい。
- 物流革新に向けた政策パッケージの認知・取り組み状況は、「商慣行の見直し」「物流の効率化」「荷主・消費者の行動変容」のそれぞれについて、全体では5割以上、運輸業では7割以上の事業所が認知しているが、「いずれも知っていて、すでに取り組んでいる」事業所は、全体では1割以下、運輸業では2割以下。
- 現在の事業所における運転手の確保状況は、全体では「不足(かなり+やや)」が3割強、運輸業では6割弱となっており運輸業の方が高い。また、運転手不足の困窮度についても、全体では「困っている(非常に+やや)」が約2割だが、運輸業では約5割となっており運輸業の方が高い。従業員規模別でみると、従業員規模が大きくなるほど困窮している割合が増加。
- 農家におけるトラック・バン
- 販売農家数の減少は続いており、農業の継続意向についても「廃業予定」とする農家が2016年度の1割強より2024年度は2割強に増加。
- 主運転者の年代別で農業の継続意向をみると、50代以下は「規模を拡大・会社運営予定」が4割半ばと最も高いが、70代以上は「規模を縮小して継続+廃業予定」が約5割と半数を占める。
- 農家の保有車種では、「軽トラック」とする農家が9割を占める状況は2016年度から変わらない。
- 主運転者の年代では「70代以上」が約5割と半数を占めており、2022年度の3割半ばより上昇。
報告書は下記当会ホームページに掲載します。
http://www.jama.or.jp/library/invest_analysis/
以上
ご参考
2024年度小型・軽トラック市場調査の概要
1.調査実施概要(2024年度調査)
事業所調査 | ユーザー調査 | WEB調査 | |
---|---|---|---|
調査手法 | 訪問留置調査法 | WEB調査法 | |
調査地域 | 東京都周辺50キロ圏および大阪市・名古屋市周辺各30キロ圏 | 全国 | |
調査対象 | 従業員数5人以上の事業所(小型・軽トラックの保有・非保有を含む) | 小型・軽トラック保有ユーザー | 小型・軽トラック保有事業者 |
母集団 | 令和3年度経済センサスの東京都・愛知県・大阪府の事業所数 | 全国の小型・軽トラック保有ユーザー | 令和3年度経済センサスの全国の事業所数にスクリーニング調査の小型・軽トラック保有率をかけて算出 |
有効回収数 | 609サンプル | 1,015サンプル | 897サンプル |
調査実施期間 | 2024年8月9日(金)~10月4日(金) | 2024年9月13日(金)~9月18日(水) |
2.調査結果概要
[総括]
- 小型・軽トラック・バンの保有台数については2023年より減少し、車種別で減少しているのは小型トラック、軽トラックとなっている。
- トラック・バンの直近2年間の購入/リースの状況については、全体では「購入/リース(新車+中古)」したユーザーは1割で2022年度から変わらず、運輸業では1割半ばで2022年度の約4割から大きく減少している。また、運輸業では今後1〜2年間の物資輸送量を「増加する」と見通す事業所が2022年度から減少し、今後1〜2年間のトラック・バン保有台数を「増加する」と見通す事業所も2022年度から減少している。
- 自動車の安全性に6割弱が関心を持っており、従業員規模が大きいほど高い。また、購入時に5割半ばの事業所が安全性を重視している。有償でも装着意向が高い先進安全技術は「衝突被害軽減ブレーキ」「歩行者の探知・保護支援システム」「誤発進防止システム」。自動運転車の導入意向がある事業所は2割弱だが、自動運転技術に期待する事業所は6割強で、「ドライバーの負担が軽減される」「安全性が高まる」への期待が高い。
- 次世代環境車の導入ではすべての車種で「ハイブリッド車」の意向が最も高く、導入検討理由は「燃料価格変動の影響を受けにくくなる」が高い一方、懸念点としては「車両価格が高い」が最も高い。
- 電気自動車(EV)超小型モビリティは5割半ばの事業所が認知しており、3割が購入や導入、利用を検討。小回りが効いて便利、駐車スペースの小ささ、運転のしやすさなどサイズや取り回しに対する期待が高い。
- 2024年問題の影響としては、運輸業では「事業所の売上、利益の減少」「ドライバーの拘束時間の減少による供給力不足」「ドライバーの採用が難航」が上位。運輸業は運輸業以外と比較し影響が大きい。また、「物流革新に向けた政策パッケージ」のすべてを認知し、すでに取り組んでいる事業所は全体では1割弱、運輸業では2割弱。
1)時系列分析
[保有状況と変化の背景]
- 小型・軽トラック・バンの保有台数は1201万台で2023年より減少。車種別では、小型トラック・軽トラックが2023年より減少。
- 直近2年間のトラック・バン保有台数は、運輸業で「保有減」事業所が「保有増」事業所を約1割上回る。
<保有変化の背景>
保有台数が減少した理由としては、「経費を節約するため」「これまで保有過多だったため」「従業員が減ったため」「輸送量が減ったため」が上位にあがる。直近2年間で保有台数が減少した社会的背景については、「全体的な景気の影響」「高齢化社会の進展・労働力不足」「ガソリンなどの燃料価格の高騰」が上位にあがる。直近2年間の物資輸送量は、全体では「増えている」が2022年度より増加するも、運輸業では「減っている」が「増えている」を上回る。なお、運輸業における稼働率低下の理由としては、「全体の運輸量が減ったため」「運転手が不足しているため」が上位にあがり、運転手不足の困窮度は2022年度より増加し、約7割の事業所が困窮している。
[需要構造の実態]
- 小型・軽トラック・バンの新車販売台数は、新型コロナウィルス感染拡大の影響で2020年に大きく減少。2023年まで緩やかに回復したものの、2024年は一部メーカーの認証不正問題に伴う出荷停止等が影響し再び減少。
- 直近2年間のトラック・バン購入率は、全体では1割で2022年度から変わらず。運輸業では1割半ばで、2022年度の約4割より大きく減少。
<需要動向の背景>
小型トラック・バンは同型車への代替が増加し、軽トラック・バンはすべて歩留り。直近2年間で買い替えた車(新車)の購入時期については、予定より「遅らせた」が「早めた」を上回る。トラック・バンを保有する事業所における買い替えについての意見は、「まだ使えるうちに買い替えるのはもったいない」「できるだけ長く使った方が経済的だと思う」との意見が7割以上。なお、運輸業では「できるだけ長く使った方が経済的だと思う」が8割で最も高く、2018年度から増加が続く。
[使用実態]
- 使用パターン(仕事、私用)については、小型トラック・バンでは2018年度以降「仕事・私用兼用」とするユーザーが増加し2割。軽トラック・バンでは「仕事専用」とするユーザーが2022年度より増加し約5割。
- 平均月間走行距離は、仕事利用では2022年度より長距離化。私用利用では2022年度から変化なし。私用専用ユーザーの平均月間走行距離は仕事利用ユーザーの約半分。
- 仕事利用の運行形態は、いずれの車種も「往復型」が最も高く、特に小型トラックの<運輸業>では2022年度より増加。
- 私用利用での用途については、「日用品の買物(食料品・雑貨など)」に使うユーザーが約6割で最も多く、また「園芸・農作業」に使うユーザーが約4割、「通勤・通学」に使うユーザーが約3割で2022年度と同じだが、軽バン(キャブバン、ボンネットバン)は「休日型レジャー(ピクニック・ドライブ・スポーツ等)」「キャンプなどのアウトドアレジャー」に使うユーザーが2割弱まで増加している。
[今後の購入・保有意向]
- 次期買い替え意向車は、小型トラック・バン保有ユーザーでは「同タイプ・同クラス歩留まり」意向が最も多い。軽トラック・キャブバン保有ユーザーでも「同タイプ・同クラス歩留まり」意向が最も多いが、軽ボンバンは「他タイプ移行」の意向が最も多く5割となっている。
- 今後1〜2年間の保有増減の見通しをみると、運輸業では保有増の見通しをしている事業所が2022年度より減少、運輸業以外では変わらない見通しをしている事業所が9割以上となっている。
- 今後1〜2年間の物資輸送量の見通しをみると、運輸業以外では「増加する」が「減少する」を上回る。一方、運輸業では「増加する」が2022年度より減少し、「減少する」が「増加する」を上回る。
2)トピックス分析
[安全技術・自動運転等次世代技術に関する意識]
- 6割弱の事業所が自動車の安全性に関心を持ち、5割半ばの事業所が購入時に安全性を重視している。従業員規模が大きい事業所ほど、安全性への関心が高い。
- 有償でも装着したい先進安全技術では「衝突被害軽減ブレーキ」「歩行者の探知・保護支援システム」「誤発進防止システム」が上位にあがり、運輸業では「ドライバー異常警報システム」も上位にあがる。
- 自動運転に対する意識では、全体では自動運転車の導入意向事業所は2割弱だが、従業員規模別でみると30人以上の事業所では3割を超える。
- 自動運転技術に期待する事業所は、全体では6割強で、従業員規模別でみると300人以上の事業所では約9割に達しており、具体的には「ドライバーの負担が軽減」や「安全性が高まる」技術を望む声が上位にあがる。
[環境配慮型車両に関する意識]
- 月々の燃料代の負担感では、「負担を感じている(非常に+やや)」事業所が8割。環境問題に関する考え方でも「多少価格が上がっても低燃費の車を選ぶ」「環境への影響を考え荷下ろしの時にアイドリングをやめる」「省資源を意識し燃費効率の良い経済速度で走るようにする」が上位にあがる。また、次世代環境車に対する購入意向については、すべての車種において「ハイブリッド車」が最も高く、次世代環境車の導入検討理由として「燃料価格変動の影響を受けにくくなる」が上位にあがる一方、懸念点は「車両価格が高い」が最も高い。
- 電気自動車(EV)の導入については、補助金が「無くても検討する」事業所は2%にとどまり、補助金が「50万円まで」だと検討する事業所が2割半ば、「50万円超~100万円」だと検討する事業所が3割弱となる一方で、「いくら補助金があっても検討しない」事業所も3割半ばとなっている。
- 電気自動車(EV)超小型モビリティは5割半ばの事業所が認知しており、3割が購入や導入、利用を検討。「小回りが効いて便利」「駐車スペースが小さい」「運転のしやすさ」などサイズや取り回しに対する期待が高い。
- 電気自動車(EV)小型トラックの積載量減については 3割強が認知、4割が購入に影響あり。
[2024年問題・物流に関する動向]
- 2024年問題の影響は、全体では「ドライバーの採用が難航」「車両の買い替えや増車」「事業所の売上、利益の減少」「ドライバーの収入減少」が上位にあがり、運輸業では「事業所の売上、利益の減少」「ドライバーの拘束時間の減少による供給力不足」「ドライバーの採用が難航」が上位にあがる。なお、運輸業以外よりも運輸業の方が影響は大きい。
- 物流革新に向けた政策パッケージの認知・取り組み状況は、「商慣行の見直し」「物流の効率化」「荷主・消費者の行動変容」のそれぞれについて、全体では5割以上、運輸業では7割以上の事業所が認知しているが、「いずれも知っていて、すでに取り組んでいる」事業所は、全体では1割以下、運輸業では2割以下。
- 現在の事業所における運転手の確保状況は、全体では「不足(かなり+やや)」が3割強、運輸業では6割弱となっており運輸業の方が高い。また、運転手不足の困窮度についても、全体では「困っている(非常に+やや)」が約2割だが、運輸業では約5割となっており運輸業の方が高い。従業員規模別でみると、従業員規模が大きくなるほど困窮している割合が増加。
[農家におけるトラック・バン]
- 販売農家数の減少は続いており、農業の継続意向についても「廃業予定」とする農家が2016年度の1割強より2024年度は2割強に増加。
- 主運転者の年代別で農業の継続意向をみると、50代以下は「規模を拡大・会社運営予定」が4割半ばと最も高いが、70代以上は「規模を縮小して継続+廃業予定」が約5割と半数を占める。
- 農家の保有車種では、「軽トラック」とする農家が9割を占める状況は2016年度から変わらない。
- 主運転者の年代では「70代以上」が約5割と半数を占めており、2022年度の3割半ばより上昇。
以上