記者会見
自工会記者会見:2023年度新役員体制発表
2023年3月23日、自工会はオンライン記者会見を実施し、2023年度の役員体制などを発表しました。1月に会長の豊田章男は辞意を表明しましたが、理事全員からの強い慰留とともに副会長がこれまで以上にバックアップを強化する決意を表明。このことにより残り1年の任期まで続投することとなりました。さらに佐藤恒治氏(トヨタ自動車次期社長)が4月より副会長に加わる人事も発表されました。
■記者会見アーカイブ(中継録画)
■副会長 片山 正則(いすゞ自動車 代表取締役社長)
これまでの日本自動車工業会の運営は、このような会見を含めて、豊田会長にリーダーシップを取っていただく形で進めてまいりました。新年度となる4月1日からは、自工会の進化をさらに加速させ、真に持続的な成長を可能とする体制の構築を目指し、全ての課題に対して、副会長が中心となり、チーム一丸となって運営していく体制へ強化することとしました。
今後は、様々な課題のテーマごとに、正副会長による活発な議論を行った上で、副会長の中から最適なメンバーがリードする形で取り組みを進めることとし、より実行力を持った、新たな自工会の運営体制で、自動車業界の550万人の仲間と共に挑んでいく所存でございます。従って、本日の会見も、一部それを先取りする形で、正副会長チームによる進行の形を取らせていただきたいと思います。新しい試みにつき、なにぶん不慣れな点もあるかとは思いますが、ご理解賜りたくよろしくお願いいたします。
それでは、私から、今後の日本自動車工業会の運営体制の改革についてご説明させていただきます。
本年1月に豊田会長が会長職の辞意を表明されて以降、大きく2つの課題について、理事全員で議論を重ねてまいりました。1つ目は、豊田会長の辞意に伴う、後継の問題です。そして2つ目は、今回の豊田会長の辞意表明から見えてきた「自工会運営の問題点とその対策」についてです。
豊田会長の辞意に関しましては、非常に早い段階で「慰留」をお願いすることで、全理事の総意が確認できました。少し詳しくお話させていただくと、本年1月末(1/26)の自工会 正副会長会議の席上で、豊田会長より自工会会長の辞意表明がなされました。豊田会長の退席後に、全副会長で対応策の協議を行い、「自動車産業を取り巻く環境が急速に変化する中、強い危機感のもと、これまで様々な改革をリードしてこられた豊田会長には、任期満了まで、引き続き、お力をお借りしたい」という意見で一致し、全副会長の総意として、慰留をお願いすべきとの結論に至りました。
一方で、「その様な環境認識を一番に分かっておられる会長の辞意表明」に対して、慰留をお願いする以上、我々副会長が、自工会の運営に対して今まで以上の覚悟を持ち、一丸となった運営体制が必要との結論にも至りました。これが、2つ目の課題でもある「自工会運営改革」に繋がりました。
そして、問題の重要性を鑑み、全理事の意見の確認が必要と考え、緊急理事ミーティングを2月初旬に開催しました。驚くことに、緊急でのミーティング開催であったにも関わらず面着による全理事の参加となり、豊田会長の辞意に対しては、全理事一致で「慰留」、また、今後も自工会が持続的に進化するためには、正副会長が一丸となった体制で運営していく必要がある。」という認識で一致いたしました。
その後、この間の経緯と議論の結果を会長に直接お伝えする機会を得て、慰留に対するご意思の確認は出来なかったものの、議論の中心が「自工会運営改革」に移っている点に関しては、賛同をいただきました。
以降、副会長が中心となり「自工会運営改革」に関しての精力的な話し合いを進め、昨日、豊田会長に、①会長続投のお願い ②自工会運営改革の方針の2点に関して、全副会長から正式に報告を行い、結果、豊田会長より留任の承諾をいただきました。
自工会運営改革に関しましては、今後の課題について正副会長で議論を深め、重点テーマは副会長が担当としてリードするなど、正副会長が一丸となり、チームで課題に取り組む体制へ強化していきます。日々のメディアの皆様とのコミュニケーションについても、副会長を中心に分担し活動を行っていきます。会長には自動車産業550万人全体を支える立場に専念いただき、またトヨタ個社の立場としては、新たに佐藤新社長に参画いただき、会長を支える副会長の一人として共に取り組んでまいります。
今後は、副会長を中心にオーナーシップを発揮する形での課題への取り組みを進め、自工会一丸となって日本の自動車産業の発展に貢献していく所存です。
本日の理事会において、経緯とともに結果を報告し、全理事より賛同もいただきました。結果、豊田会長に続投を受諾いただいた形にはなりますが、全理事の気持ちとしては「自工会運営改革の開始にあたり、『想いと経験』をお持ちの豊田会長に新たに1年間に限り改革の舵取りをお願いする」もので、この1年間で全理事挙げて、
持続可能な「進化する自工会」作りに邁進する覚悟です。
■副会長 永塚 誠一(自工会 専務理事)
これまで豊田会長には、カーボンニュートラル等の様々な課題に真正面から向き合い、経団連モビリティ委員会や官邸との懇談会の立ち上げを実現するなど、業界の垣根を超えた「異次元の活動」を、孤軍奮闘、推進してきていただきました。それだけに、豊田会長の続投は理事メンバーの総意であり、その声を受け止めていただいた会長のご決断に感謝申し上げます。
今後につきましては、「自動車産業全体だけに留まらず、日本の未来を良くしたい」とする豊田会長の強い想いに対して、副会長全員が同様の強い意志をもって行動し、自工会が一丸となってこの難局を乗り越えていく必要があります。
このような状況において、新たに佐藤副会長をお迎えすることができますことは大変心強いことであり、自工会活動の一層のパワーアップを目指してまいります。
自工会事務局を預かる副会長といたしましては、会員の皆様の活動をしっかりと支えていく決意です。
■副会長 日髙 祥博(ヤマハ発動機代表取締役社長)
今日の自動車産業を取り巻く環境は100年に1度の大変革の時代であり、情勢は常に変化しています。特にカーボンニュートラルの動向は、各国・各地域ごとに多様に変化しており、多様な選択肢・技術的中立性など、4輪・2輪を問わず、モビリティ全体として、見直しや軌道修正が求められています。
変革の時代に、常に変化を求められる、これに自工会も対応していかなければなりません。2020年の自工会変革後、着実に課題解決型に進化した一方で、会長に過度な負担が集中していました。これではどなたが会長になっても持続性が厳しいと私自身改めて感じました。
ただ、このタイミングで体制見直しができるのはむしろチャンスと捉え、チャンスを逃さないためにも、変化を恐れず、この新体制で役割を分担しながら、オールJAMAでこの難局を乗り越えてまいります。
■副会長 三部 敏宏(本田技研工業 代表執行役社長)
昨年1月に副会長に就任した際に、「2050年のカーボンニュートラルをはじめとした難しい課題に取り組むことは、むしろ絶好のチャンスと捉え豊田会長はじめ、自工会の皆さんと変革の主体者となり時代を作っていこう」と抱負を述べ、取り組んでまいりました。
一方この1年を見ても電動化の加速や経済安保を踏まえた各国政策の動きなど、グローバルでの環境変化がさらに早くなっており、難易度も増していると感じています。その中で今、片山副会長から説明があったように自工会も様々な課題に対応すべく、これまで以上に副会長がリーダーシップをとり、チーム一丸となった運営に進化させることにいたしました。
私自身も、今まで以上に副会長としての役割を果たしていく所存です。モビリティを通じた社会の変革や、新たな価値の創出を目指し、このたび副会長に加わっていただくトヨタ自動車の佐藤新社長も一緒に、皆で一丸となって取り組んでまいりたいと思います。
■副会長 内田 誠(日産自動車 代表執行役社長)
いま副会長の方々がおっしゃった通り、この一年を見ても我々のビジネス環境は大きく変わっていると思います。過去に一年でこれだけのことがあったことはなかったと言っても過言ではないと思います。そういった環境下において、反省点になるのですが、豊田会長にいろいろなことをお任せさせていただく中で、自分のオーナーシップというものが変革できる覚悟を持った上でできていたかというと、ここは足りなかったところがあったと思います。
今回こうした論議をさせていただく中、日本の競争力をさらに付けていく、業界の価値をさらに伸ばしていく、延いては自工会の進化につながる。ここに我々が一体となって注力して行きたいと思いますので、引き続き、これからもさらにオーナーシップを持って参画して行きたいと思います。
■副会長 鈴木 俊宏(スズキ 代表取締役社長)
自工会という立場だけでなく日本の視点から発信力のある豊田会長に会長を継続していただくことがベストな選択であると考えます。副会長はしっかりと支えていく覚悟で自工会を盛り上げていきたいと考えております。
■次期副会長 佐藤 恒治(トヨタ自動車 次期社長)
4月から、(トヨタ個社を代表して)副会長を務めてまいります。
副会長の皆さまからお話があったとおり、カーボンニュートラルの実現やモビリティ社会の発展に向けて、自動車産業が一丸となった取り組みが大変重要だと考えています。
私自身、これまで特にモータースポーツを通じて業界連携の大切さを肌で感じてまいりました。今後、自工会の場でも会員各社の「心」と「力」を合わせて、未来への挑戦を加速してまいりたいと思っています。
(会長、副会長、理事の皆さまと一緒に)全力で取り組んでまいりますので、これからどうぞよろしくお願いいたします。
■会長 豊田 章男(トヨタ自動車 代表取締役会長)
まず今回辞任を申し上げた経緯ですが、「トヨタの社長を降りるということは、自工会の会長を降りるということ」であり、その前提で様々な決断をしてまいりました。
私が自工会の活動に初めて参画させていただきましたのは、2010年のことになります。その翌年には、東日本大震災が発生し、日本全体が悲しみのどん底に突き落とされたとともに自動車産業も壊滅的な打撃を受け、世界各国の自動車生産に大きな影響を与えました。
それ以降、自工会の組織改革や現在のフルラインナップの副会長体制など、会長が変わったとしても、
「日本のため、未来のため、550万人の仲間と共に動く自工会」
というブレない軸が作れたのではないかと思っております。
そしてもう一つ喫緊の課題でもあります、カーボンニュートラルにおいても、それぞれの国や地域に合ったやり方でよいといった論調の変化も見え始め、共感してくださる方も増えてきたと実感をしております。
私自身、トヨタの社長、自工会会長、そしてモリゾウという3つの顔を持っており、これからはむしろ先頭に立たず、モリゾウとしての活動を継続することで、自動車産業、また550万人をサポートした方が変なバッシングを受けなくて良いのではないかと思いました。
そして辞任を決意致しました。
にもかかわらず、続投決めましたのは、先ほど片山さんからもお話がありましたように、正副会長が一丸となって
「チームで課題に取り組んでいく体制を作りましょう」という具体的な提案をいただいたからです。
また、先ほどの話に戻りますが、東日本大震災の時に、私自身、
「自動車はみんなで一緒にやる産業」
「どこか一社が欠けても車は作れない、
バイクは作れない、
大型車は作れない、
軽自動車は作れない」
「日本の自動車産業は世界に必要とされている」
ということを改めて実感をした次第です。この経験が私自身の自工会活動のブレない軸になってきたと思いますし、早いもので、私が最初に自工会会長に就任してから、ちょうどトヨタの社長と同じく12年が経過しております。
私は、就任の挨拶で2つの気概を持って自工会に取り組むことを約束しました。
「国内の自動車産業を守り抜く気概」
もう一つは、
「世界の自動車産業をリードする気概」
であり、そのために競争と協調を何よりも大切にしたいと申し上げました。この気持ちは今も全く変わっておりませんし、むしろ強くなっております。
残された一年という任期の中で、副会長の皆さま、そして理事の皆さま、スタッフの皆さま、550万人の未来の幸せにつながるよう尽力してまいりたいと思いますので、一年間の続投をお許しいただきたいと思います。
■自工会2023年度重点項目
質疑応答では、日髙副会長より自工会の2023年度の重点活動項目についても発表がありました。