自動車用ガソリンエンジンオイルの品質規格「GLV-2」の設定について

(一社)日本自動車工業会(以下、自工会)と石油連盟は、低粘度省燃費のガソリンエンジンオイルの品質規格「GLV-2」を新たに設定した。本規格は粘度分類規格(SAE J300注1)0W-16, 0W-20を対象とし、高粘度指数化によって中低温域の粘度を下げることで省燃費性を向上させるものである。摩耗防止性や高温酸化安定性 等は、JASO GLV-1注2と同等の性能を有しつつ、過給エンジンにも適用できるようLSPI(Low speed pre ignition)防止性の規定も追加し、既販車への適用も念頭に開発された規格である。
本規格は、(公社)自動車技術会(以下、自技会)よりJASO注3 M 364:2024 自動車用ガソリン機関潤滑油として発行された。

「GLV-2」の種類表示

この規格制定にともない、自工会、石油連盟等で構成するJASOエンジン油規格普及促進協議会注4は、同規格の運用マニュアル「自動車用ガソリン機関潤滑油規格(JASO M 364:2024)の運用マニュアル」を制定した。
これにより販売元は協議会に届け出ることによって、性能分類表示に関する自己認証制度を利用できるようになる。本規格に適合するエンジンオイルは2024年10月からの市場導入を予定しており、エンジンオイル販売元はオイル缶等に「GLV-2」注5の種類表示をすることができる(上図参照)。JASO M 364:2024運用マニュアル本文は、(一社)潤滑油協会のホームページ(https://www.jalos.or.jp/index.html)に掲載する。

「GLV-2」規格化の経緯

エンジン油は内燃機関から排出されるCO2削減に大きく寄与するアイテムであり,低粘度化はその有効な手段の1つである。2019年に制定したJASO GLV-1規格は,SAE 0W-8, 0W-12を対象とした低粘度の自動車用ガソリン機関潤滑油規格となっているが、更なる低粘度化は、技術と普及との両立の観点で難しくなっている。そのような中、一般社団法人日本自動車工業会や石油連盟に属する企業、及び潤滑油関連企業から、新たな省燃費の自動車用ガソリン機関潤滑油規格の要望が出された。この技術は、高温側の粘度は従来のSAE20やSAE16の粘度を維持し、油圧や信頼性(油膜)を確保しつつ、中低温域の粘度を下げることで、更なる燃費向上が期待できる技術である。

2021年6月、自工会と石油連盟合同のJASO次世代ガソリンエンジン油TFで超高粘度指数の次世代省燃費ガソリン機関潤滑油の規格検討が開始。超高粘度指数化する上で、ポイントとなる蒸発性とせん断安定性の試験方法を新たに制定した。また、自動車用ガソリン機関潤滑油としてのそれ以外の品質は、JASO GLV-1同等以上の性能を有し、省燃費性はJASO M 365、JASO M 366にて高い省燃費性を有することを確認した。

2024年3月にガソリン機関潤滑油の品質規格(JASO M 364:2024)にJASO GLV-2が制定された。

また、燃費試験法については、より幅広いエンジン機構に対応した規格とする為、異なる動弁機構を有する燃費試験JASO M 365およびJASO M366にて規格を規定した。JASO M 366にて省燃費性の試験に合格したオイルは 「GLV-2A」、JASO M 365にて省燃費性の試験に合格したオイルは 「GLV-2B」とすることとした。

注1:
SAE J300:Society of Automotive Engineers Internationalにより定められたエンジンオイル粘度分類規格
注2:
JASO GLV-1: 2019年に制定された0W-8/0W-12省燃費油規格
注3:
JASO:Japan Automobile Standard Organization 日本自動車規格:自技会が定める自動車規格
注4:
JASOエンジン油規格普及促進協議会:日本の自動車用エンジンオイルにかかわる各種業界団体および学術団体等が、JASOエンジンオイル規格の国内外での適正な普及を図るために設立した協議体
注5:
燃費試験法に応じて,GLV-2AまたはGLV-2Bのラベル表記を分ける
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