ニュースリリース

2024年度普通トラック市場動向調査について

一般社団法人 日本自動車工業会(会長:片山 正則)は、2024年度に実施した『普通トラック市場動向調査』の結果をまとめました。

本調査は、普通トラックの保有・購入・使用実態、輸送ニーズの変化と対応や、物流を取巻く市場環境の変化を時系列的に捉え、隔年でアンケートを実施しているものです。荷主調査は、4年前の2020年度に実施したヒアリングをより深める形で、各業界の荷主等の企業にご協力をいただいて実施しました。
また、時系列での分析と併せて以下の把握も行いました。

  1. 2024年問題(ドライバーの時間外労働の上限規制)
  2. 環境意識と次世代環境車
  3. 安全に対する意識
  4. 物流DX

調査結果の主な特徴は以下のとおりです。

ユーザー調査より

  • 経営状況
    運輸業、自家用とも経営状況が好転している事業所は増えているが、全体の中では少数派である。
    エネルギー価格の高止まりも経営を圧迫しており、本格的な回復には至っていない様子がうかがえる。
  • 需要動向
    国内全体の輸送総量は、新型コロナ後に一時的に回復を見せたが、直近では減少傾向にある。
    だが、運輸業の大規模事業所、経営が好調な事業所でのトラック購入意向は高い。
  • 2024年問題(ドライバーの時間外労働の上限規制)
    ドライバー不足は、特に運輸業で強まっている。その対策として、運輸業では給与面や運転時間面での改善に努めており、荷主に対しても運賃の適正化や時間の効率化への協力を求めている。
  • 環境意識と次世代環境車
    エコドライブ、低燃費車両はユーザー・荷主ともにニーズあり。カーボンニュートラル対応となるハイブリッド車導入意向は、運輸業の中型トラックが2割弱で前回と同程度。
  • 安全に対する意識
    運輸業では、対面点呼や酒気帯び確認等、健康管理を中心としたドライバー管理が交通事故防止安全対策の上位に。自家用では乗務前の酒気帯び確認実施率が大幅に増加。自動運転走行機能・隊列走行については、「ドライバー不足解消」「事故の減少」効果を認識しつつも、導入意向は3割程度で前回並み。
  • 物流DX
    物流DX対応については、今後取り組む施策としての認識は徐々に高まりつつあるが、実際に取り組むとなると他の懸案事項が優先され、物流DXへの取り組みを身近に感じている事業所は限られている状況がうかがえる。

荷主等ヒアリングより

各社では、トラックドライバー対応、事前出荷情報(ASN : Advanced Shipping Notice)や倉庫・現場管理、環境車両・カーボンニュートラル等の領域で、自社及び連携による幅広い取り組みが進められている。
今後は、こうした物流最適化の取り組みを支える各ステークホルダーにおける更なる取り組みの加速が求められる。

報告書は下記当会ホームページに掲載します。

http://www.jama.or.jp/library/invest_analysis/

以上

ご参考

2024年度普通トラック市場調査の概要

1.調査実施概要

  ユーザー調査
調査地域 全国
調査対象 普通トラック保有事業所(軽・小型トラック併有事業所を含む)
調査方法 郵送法
サンプリング 運輸業 建設業、製造業、卸・小売業
企業・事業所リストより運輸業
該当企業としてランダムに抽出
普通トラック保有企業リストより抽出
有効回収数

1,005サンプル

319サンプル

調査実施期間

2024年8月下旬~10月上旬

  荷主等ヒアリング
調査対象 大手荷主等企業
調査業種 製造業、建設業、物流企業、卸・小売業
実施先 普通トラック分科会各社の紹介による4社
調査方法 訪問でのヒアリング
回答者 物流部門の担当者等
調査時期 2024年9月下旬~12月上旬

2.調査結果概要

(1)ユーザー調査
[経営状況]
  • 運輸業、自家用とも経営状況が好転している事業所は増えているが、全体の中では少数派である。エネルギー価格の高止まりも経営を圧迫しており、本格的な回復には至っていない様子がうかがえる。
    • 今回の調査結果では、最近の経営状況が『好転』した事業所は、運輸業では前回(22年度)の15%から24%に増加し、自家用では35%と前々回(18年度)からの増加傾向が続いている。
    • 2年前と比べた荷扱量水準は、運輸業平均で前回93.0%から96.7%に増加しているが、自家用は99.2%から97.9%に微減している。
    • 現在のトラック稼働状況の『繁忙』の割合は、運輸業では31%から34%に増加しているが、自家用は38%から28%に減少している。
    • 世界的な社会情勢等の影響を受け、燃料費は前回よりも割合は低下しているが、引き続き運輸業2位、自家用で1位。燃料価格も下がっていないので、24年問題とともに引き続き、経営上の課題としては大きいとみられる。
[需要動向]
  • 国内全体の輸送総量は、新型コロナ後に一時的に回復を見せたが、直近では減少傾向にある。
    だが、運輸業の大規模事業所、経営が好調な事業所でのトラック購入意向は高い。
    • 国土交通省の交通関連の統計資料*によると、20年度に新型コロナの影響により大きく減少した国内貨物の輸送量は、輸送トン数については21年度に一時的に増加するも22年度以降は減少傾向が続く。新型コロナ後の増加していた輸送トンキロも23年度は減少。トラックは、輸送トン数は国内貨物と傾向は同じだが、輸送トンキロは新型コロナ以降増加が続いている。構成は、輸送トン数、輸送トンキロとも10年前と似た状況にある。
    • 普通トラックの新車販売台数*は、19年からは減少傾向となり、特に22年は5.7万台と過去10年間で最低台数となったが、23年は6.7万台、24年は7.3万台と回復している。一方、普通トラック保有台数は、近年増加傾向が続いていたが、24年3月の推計値では減少に転じている。
    • 運輸業での現保有車の購入形態は、「代替」が前回同様6割台で過半数を占める。
    • 保有台数の増減状況は、この2年間で保有台数を増やした事業所、今後5年間で購入意向のある事業所の割合は、運輸業・自家用とも前回と同程度で、全体としては大きな動きはみられない。
      だが、運輸業の中でトラック保有台数が多い事業所や経営状況が好転した事業所では、直近2年間で事業所全体での保有台数が「増えている」割合や今後5年間の購入意向割合が他と比べて高い。
    注:
    交通関連の統計資料は「自動車輸送統計年報」「鉄道輸送統計年報」「内航船舶輸送統計年報」「航空輸送統計年報」。
    新車需要および新車登録台数は、暦年(1月~12月)の台数について表記。
[2024年問題(ドライバーの時間外労働の上限規制)]
  • ドライバー不足は、特に運輸業で強まっている。その対策として、運輸業では給与面や運転時間面での改善に努めており、荷主に対しても運賃の適正化や時間の効率化への協力を求めている。
    • ドライバーの不足状況(かなり+やや)をみると、自家用は前回21%から19%とやや減少しているが、運輸業では前回39%から45%に増加しており、運輸業のドライバー不足の切迫感は強まっている。
    • 運行状況をみると、運輸業では、1回あたりの平均運行距離と月間走行距離は減少しており、ドライバーの時間外労働の上限規則が走行距離に影響を与えている様子がうかがえる。また、高速道道路の利用距離割合平均も着実に増加している。
    • 上記に対する運輸業の対策は、「荷主への運賃値上げの交渉」「高速道路の利用を増やす」「ドライバー給与の引き上げ」が上位に挙がっており、ドライバー確保に向けて給与面と運転時間面の改善に努めている様子がうかがえる。
    • 運輸業では、10トンクラスの保有率が増加傾向にあり、大型免許で運転できるトラックの保有を増やした比率や増車計画ありの比率も他の免許と比べて高く、トラックの大型化による輸送効率アップで対策を考えている事業所も存在している。
    • このような取り組みが行われている一方で、運輸業から荷主への要望としては、「運賃の適正化」「荷待ち時間の短縮」「運行時間帯の最適化」が上位を占めており、金銭面と時間面の両面でのさらなる状況改善を望んでいる状況がうかがえる。
[環境意識と次世代環境車]
  • エコドライブ、低燃費車両はユーザー・荷主ともにニーズあり。カーボンニュートラル対応となるハイブリッド車導入意向は、運輸業の中型トラックが2割弱で前回と同程度。
    • 運輸業・自家用ともに実施している環境施策の上位項目は、「エコドライブの実施・管理」「最新の排出ガス規制適合車、低燃費車の使用」が挙がっており、荷主が運輸業に現在指定している環境対策でも上位に挙げられている。
    • 環境配慮型車両の導入意向の割合は、中型ハイブリッド車が運輸業で2割弱、自家用で3割弱と前回と同程度。だが、導入時期については、運輸業の「(導入)時期は未定」が前回49%から57%に増加したのに対し、自家用は前回63%から53%に減少しており、導入意向が高い自家用の導入時期がより具体化している。
    • 導入の課題は、「車両価格が高い」が運輸業・自家用ともに7割弱と最も高い。「運行中に充電できる施設が少ない」「航続距離が短い」「積載可能重量が小さくなる」「積載スペースが小さくなる」も上位に挙がっており、導入時の想定用途は「中・近距離の幹線輸送用」を半数近くが想定している。
[安全に対する意識]
  • 運輸業では、対面点呼や酒気帯び確認等、健康管理を中心としたドライバー管理が交通事故防止安全対策の上位に。自家用では乗務前の酒気帯び確認実施率が大幅に増加。自動運転走行機能・隊列走行については、「ドライバー不足解消」「事故の減少」効果を認識しつつも、導入意向は3割程度で前回並み。
    • 交通事故防止安全対策は、運輸業では「乗務前の酒気帯び確認」が9割と最多で、対面点呼や健康管理を中心としたドライバー管理による安全対策も8割弱が取り組んでいる。自家用では22年4月に義務化された「乗務前の酒気帯び確認」は前回の50%からさらに上昇し、59%となった。
    • 対面点呼や健康管理に関するIT関連機器等の今後導入(拡充)検討をみると、運輸業では点呼関連とアルコールインターロックが1〜2割で上位に挙がっているが、自家用ではアルコールインターロックが1割にとどまる。
    • 安全サポート機器の必要性を感じたヒヤリハット事例では、「運転中の車両故障、不具合が発生した」「後方の衝突」「前方の割り込み」等、前・後方関連の事例が運輸業で4割前後と多い。
    • 事故防止にも効果が期待される自動運転走行機能・隊列走行については、運輸業・自家用とも「ドライバー不足解消」「事故の減少」がメリットと認識される一方で、「システムの誤作動・故障」「故障・事故発生時の責任所在が曖昧」を気にしている。自動運転走行機能の導入意向は3割程度で前回並み。
[物流DX]
  • 物流DX対応については、今後取り組む施策としての認識は徐々に高まりつつあるが、実際に取り組むとなると他の懸案事項が優先され、物流DXへの取り組みを身近に感じている事業所は限られている状況がうかがえる。
    • 運輸業の輸送合理化・人材面等の施策実施状況の中で、「輸送業務関連のソフト・ハードのDX化」の取り組みは11%と下位にとどまるが、今後の予定は24%と他の項目と比べて上位に挙がっている。自家用でも、今後の予定施策で前回10%から18%に増加している。
    • 運行管理システム・サービス関係の物流DX関連の項目をみると、運輸業では「車両位置確認」は前回同様4割弱が導入済みで最も多くなっているが、求貨求車(Webでの配車マッチングアプリ)といった他の項目は1割以下にとどまる。
    • 荷主から運輸業に寄せられた要望に事業所が応える動きの中で、物流DX関係の項目は最も高い「荷主輸送システムへの対応」でも1割強。運輸業が荷主に協力してほしい項目でも、物流DX関係で最も高い「機械化による荷役負担軽減」は約1割にとどまっている。
    • 以上から、物流DXを取り組むべき施策として事業所は認識し始めてはいるが、本格的に取り組むまでには至っていない状況がうかがえる。
(2)荷主等ヒアリング
  • 各社では、トラックドライバー対応、事前出荷情報(ASN : Advanced Shipping Notice)や倉庫・現場管理、環境車両・カーボンニュートラル等の領域で、自社及び連携による幅広い取り組みが進められている。
    今後は、こうした物流最適化の取り組みを支える各ステークホルダーにおける更なる取り組みの加速が求められる。
    • 様々な業界の荷主等4社における2024年問題、物流DX、環境対応の取り組みについては、各企業の実状に応じた工夫・改善とともに、物流全体を広く見据えた内容となっている。
    • 2024年問題については、ドライバーの労働時間、運賃改定等の対応等が着々と進められている。
      リードタイム短期化・待機時間・荷役作業といった物流上の商慣行や低賃金・長時間拘束というドライバー労働環境等、これまで当然とされてきた点についての見直しが各業界・企業で積極的に推進されている。共同輸配送における船舶・鉄道へのモーダルシフト、モーダルシフトと中継輸送の併用による長距離輸送対応等の取り組みも進んでいる。
      2024年問題を背景に物流効率を指向する流れの中、トラックメーカーに対しては、荷室形状の改善、コンテナサイズの標準化、動態管理の標準装備化といった方策への要望があがっている。
    • 物流DXについては、効率化・見える化等の側面からの取り組みが進んでいる。事前出荷情報(ASN:Advanced Shipping Notice)による検品レスを通じた作業時間の効率化をはじめ、検品・ピッキング等の工場・倉庫内等の作業システム・伝票管理、物流拠点や工事現場への入退場管理、動態管理等、その対応範囲は幅広いことが確認できる。
      DXに対する要望として、フィジカルインターネット*1等の最新動向を踏まえたトラックメーカー側からの提案希望、自動運転化への期待の声もあがっている。
    • 環境対応については、EV・FCV等の環境配慮型車両の導入が進んできている。合わせて、リチウムイオンバッテリー、太陽電池やBDF(バイオディーゼル燃料)利用、水素ステーション等の燃料面や、リトレッドタイヤ*2の利用等、車両本体に付帯する部分も取り組みがなされている。
      また、工事現場への搬出入拠点の設置、DX活用による交通管理等により周辺環境改善に寄与する取り組みも行われている。
      要望としては、トンクラスやダンプ等の車種面における環境対応車両種類の充実が期待されている。さらに、車両価格面、燃料・充電インフラ整備に関しては、企業単独での対応が難しく、これらに対する補助・支援施策といった行政への要望もみられる。
    • 安全対策については、従前から基本的な取り組みは各社で既に実施されている中、転落防止対応、アルコール検知・ロック機能や電子ミラー等の標準装備化等による事故防止対応への要望があがっている。
    • 各種取り組みに共通した特徴としては、自社の事業範囲にとどまらず、3PL等の物流関連企業はもとより、同業他社、異業種企業、自治体等に至るまで、幅広い関係者との協働・連携があげられる。物流が「商流を超えた関係性の構築」の契機となり、共同体制での取り組みが進められている中、その拡大のためのさまざまな支援も必要な状況であることも確認された。
    (※注)
    1:インターネット通信の考え方を物流(フィジカル)に適用し、デジタル技術を駆使した新しい物流の仕組み。
    2:走行により摩耗したトレッドゴム(接地部分のゴム)を張り替えて再利用するタイヤ

以上

資料

ページトップへ