一般社団法人 日本自動車工業会 JAMA

COP28関連イベントレポート

COP28 @UAEにおける「多様な選択肢」の訴求について

1.開催概要:

2023年12月6日、アラブ首長国連邦のドバイにて開催されたCOP28会場のジャパンパビリオンにて、「Diversity in Carbon Neutrality」と題した、一般社団法人日本自動車工業会主催のサイドイベントを開催致しました。

世界の科学的知見の権威であるIPCCの最新報告書の主要執筆者の方々に加え、ブラジル自動車工業会を代表する方や、ダイハツ工業の専門家を登壇者としてお迎えし、気候変動に関する最新の科学的知見・地域のバイオマス資源活用の側面から、自動車のライフサイクル全体をカバーする「つくる」・「はこぶ」・「つかう」の領域における多様なソリューションの可能性や、コベネフィット等についてパネルディスカッションを行いました。

【登壇者】

  • 有馬 純氏(東京大学公共政策大学院 特任教授/IPCC第6次評価報告書WG3, 第17章の主執筆者 第1章序章とフレーミング主執筆者)※モデレーター
  • スザナ・カーン・リベイロ氏(リオデジャネイロ連邦大学 教授/IPCC第6次評価報告書WG3, 第10章の主執筆者)
  • ヘンリー・ジョセフ・ジュニオール氏(ブラジル自動車工業会(ANFAVEA) テクニカルダイレクター)
  • 上西 真理氏(ダイハツ工業株式会社 BRバイオ推進室 室長)
  • 饗場 崇夫氏(一般社団法人日本自動車工業会 国際温暖化政策分科会長)
2.各登壇者からのプレゼンテーションの内容
写真:饗場氏

饗場氏

  • 2030年SDGsの進捗遅れを認識し、自工会は危機感を持ち、CNに向けて最大限の努力をしている。
  • 「the range of pathways」や「multi-pathway approaches」の重要性は、IPCCの最新の報告書だけでなくG7諸国やG7各国自工会にも認識されている。
  • 過去20年間、日本は道路交通部門において-23%のCO2削減を実現するなど、HEVや軽の普及などの多様な選択肢の実践を通じ、G7諸国でもトップのCO2排出削減の実績を残している。
  • カーボンニュートラルに向けたCO2排出削減のための多様な選択肢(技術・取り組み)は、G7で展示したように、着実に実行段階にある。
  • 出来るだけ早くから、出来るだけ多く排出削減を進めるために、関係の皆様と一丸となって、気候変動と戦う必要がある。そのためには、地域の多様性を尊重し、テクノロジーオープンでマルチパスであることが重要。意思のある情熱と行動が、将来を変えることに繋がる。
写真:上西氏

上西氏

  • 持続可能な地域社会づくりに貢献するため、稲作農家、近江牛農家、メーカー、行政が協力し、バイオマス資源を地産地消するプロジェクトを立ち上げた。
  • カーボンニュートラルへの道筋は多様であるため、それぞれの地域に適した解決策を見つける必要がある。
  • 地域社会の多様なメンバーが力を合わせることで、CNの達成のみならず、地域社会を持続可能なものにしていくことができる。本件は、世界の各地でも適用可能性があり、SDGsの複数の目標にも貢献できる。
  • バイオガス計画は既存の設備で実施できるため、我々は今すぐ行動を起こすことができる。
写真:リベイロ氏

リベイロ氏

  • 本当の意味での炭素削減という観点では、LCAの考え方が重要。地域状況の差異がある。
  • 各国・地方の状況に応じた色々なオプションがある。1つの地域ではよい解決策であっても、別の地域では状況が変わってくることもある。パワートレインのコンビネーションの良し悪しは、国による。
  • サステナビリティを考える際には、アクセスと平等性、コスト、パートナーシップ等を考えることも重要。
  • バイオ燃料については、転換技術が成熟しており、一部の国には既に技術がある。但し、技術だけではなく、ツール・戦略が無ければ、こうしたオプションを利用できない。教育・行動変容や、R&Dも重要。
  • ブラジルでは、バイオマスが豊富にあるため、バイオエネルギーにもフォーカスしている。
  • 脱炭素への移行の加速化と、今無い技術を商業化して可能性を広げていくことも重要。BEV、 HEV、 バイオマス、バイオエタノールを使った車等が貢献する。
写真:ジュニオール氏

ジュニオール氏

  • 自動車から排出されるCO2を削減またはゼロにするためには、EV化とバイオ燃料という、2つの技術的なパスウェイがある。
  • ブラジルは、クリーンで再生可能なエネルギー生産の割合が多いという恵まれた状況にある。エネルギーのほぼ半分は、水力、太陽光、風力、バイオマス、薪などの再生可能エネルギーによるものである。このような状況を活用するため、ブラジルでは、Well to Wheelの考え方による脱炭素化が進められている。
  • ブラジルでは、ガソリンとバイオエタノールどちらでも走行できるフレックス燃料の自動車が販売されており、お客様にも好評。フレックス燃料を使用できるHEVも販売されており、ベストセラーとなっている。
写真:有馬氏

有馬氏

サイドイベントのまとめとして

  • G7広島の展示例、G7各国自工会共同声明、竜王町やブラジルでの取組や、IPCCの科学的な知見についても説明頂いた。
  • 今回の議論のキーワードは多様性。都市や地方では、状況が異なる、優先課題も異なる。多様性を認識する必要があり、マルチパスが重要。
  • 我々は野心を持つ段階から、実装・実行段階へと移行しようとしており、今すぐに行動を起こさなければならない。
  • 排出削減には、様々な課題・現実がある。都市部および地方部の関係者からもサポートを得ることが重要。それによって、公正な移行が果たせると考える。これは、バイオマスだけでなく、風力や太陽光等の再生可能エネルギーも同様である。
  • 我々は、野心を実現していかないといけないという困難な局面にある。共通のゴールであるカーボンニュートラルに向けて、運輸部門は重要なセクターである。
イベント配信録画(英語オリジナル音声)
3.結果概要

プレゼンテーション、パネルディスカッションを通じ、2050年CNに向けて、各国・地域の多様性を尊重し、テクノロジーオープンでマルチパスであることが重要であるというG7広島でも共有されたメッセージを、24年G20、25年COP30のホスト国であるブラジルの有力者と共有すると共に、聴講者に発信することが出来ました。

▼COP27におけるJAMAサイドイベントのレポートはこちら

【略語便覧】

BAU

Business As Usual

成り行き

BECCS

Bioenergy with Carbon Capture and Storage

炭素回収・貯蓄付きバイオマス発電(技術)

BEV

Battery Electric Vehicle

電気自動車

CDR

Carbon Dioxide Removal

炭素除去(技術)

CN

Carbon Neutral

カーボンニュートラル

DACCS

Direct Air Carbon dioxide Capture and Storage

二酸化炭素直接回収(技術)

GHG

Greenhouse Gas

温室効果ガス

JAMA

Japan Automobile Manufacturers Association

一般社団法人日本自動車工業会

ICEV

Internal Combustion Engine Vehicle

内燃機関自動車

IEA

International Energy Agency

国際エネルギー機関

IPCC

Intergovernmental Panel on Climate Change

気候変動に関する政府間パネル

NZE

Net Zero Emissions by 2050

IEAのシナリオの一つ

OICA

Organisation Internationale des Constructeurs d'Automobiles

国際自動車工業連合会

SDGs

Sustainable Development Goals

持続可能な開発目標

WG3

Working Group 3

IPCC内で緩和を取り扱うワーキンググループ

ページトップへ