一般社団法人 日本自動車工業会 JAMA

COP29関連イベントレポート

COP29 @アゼルバイジャンにおける「多様な選択肢」の訴求について

1.開催概要:

一般社団法人 日本自動車工業会(会長 片山正則/以下、自工会)は、2024年11月20日、アゼルバイジャン・バクーにて開催されたCOP29会場のジャパン・パビリオンにて、「Diversity in Carbon Neutrality -Importance of Carbon-Neutral Energy-」と題したサイドイベントを開催致しました。

開会挨拶として、日伯の政府関係者より、CN燃料とハイブリッドエンジン等の高性能モビリティを組み合わせてCNを推進する国際枠組みであるISFM (Initiative for Sustainable Fuel and Mobility)および自動車のライフサイクル全体を通じた排出削減の重要性等について説明頂きました。

そして、世界の科学的知見の権威であるIPCCの最新報告書の主執筆者をモデレーターとして迎え、欧伯の燃料業界関係者および欧日のエネルギーシンクタンクの専門家をパネラーとして招き、道路交通部門の脱炭素化について議論しました。

【登壇者】

  • 有馬 純氏(東京大学公共政策大学院 特任教授/IPCC第6次評価報告書WG3, 第17章の主執筆者 第1章序章とフレーミング主執筆者)※モデレーター
  • 米澤 有里彩氏(経済産業省 製造産業局 自動車課 課長補佐)※開会挨拶
  • Laís Garcia氏(ブラジル外務省 再生可能エネルギー課長)※開会挨拶
  • Liana Gouta氏(FuelsEurope (欧州燃料製造者協会)/事務局長)
  • Ricardo Abreu氏(UNICA (ブラジルサトウキビ産業・バイオエネルギー協会)/持続可能モビリティコンサルタント)
  • Ilkka Hannula氏(IEA (国際エネルギー機関)/シニアエネルギーアナリスト)
  • 坂本 敏幸氏(一般財団法人日本エネルギー経済研究所/理事 環境ユニット担任)
  • 饗場 崇夫氏(一般社団法人日本自動車工業会/国際温暖化政策分科会長)
2.各登壇者からの説明内容:

開会挨拶として、経済産業省の米澤氏は、保有車両や車両ライフサイクル全体での排出削減の観点も踏まえ、各国の事情に合わせた多様な道筋による脱炭素化の重要性を紹介し、特にバイオ燃料等の脱炭素燃料とHEV等の高性能モビリティ機器の組み合わせについて、COP30ブラジル開催に向け、ISFM等を通じて日伯連携して発信していきたい旨紹介されました。

また、ブラジル外務省のGarcia氏は、ブラジルにおける再生可能燃料とフレックス車両やHEVの組合せによる産業の活性化の状況、科学的根拠に基づきライフサイクル全体を捉えた脱炭素化アプローチの重要性、エネルギー安全保障に対応するための多様な選択肢への投資の重要性等について言及されました。

FuelsEuropeのGouta氏は、燃料CN化へのコミット、運輸部門における脱炭素化において持続可能な再生可能燃料が果たす役割や、個々の技術の選択肢におけるライフサイクル全体での評価の必要性、2024年4月のTurin Joint Statementから2025年のCOP30ブラジル開催までの持続可能なバイオ燃料に関するモメンタムの上昇等について言及されました。

UNICAのAbreu氏は、バイオエタノールの生産による高いCO2排出削減効果雇用創出等の付加価値効果、ライフサイクル全体を通じた評価の重要性、ブラジルでは森林破壊や食料競合の懸念が無いこと、持続可能なエタノール生産方式の実現の必要性等について紹介されました。

IEAのHannula氏は、世界のCN化にはCN燃料が必要であること、再生可能燃料に関わる共通基準の必要性、LCA排出量ベースの評価システム導入、脱炭素化新技術のコストアップに対応するためのインセンティブ制度(段階的なラベリング制度等)の確立、国際機関および運輸部門以外の鉄鋼分野等の関係ステークホルダーとの連携の必要性について触れられました。

日本エネルギー経済研究所の坂本氏は、道路交通部門の脱炭素化に向けてバイオ燃料や合成燃料が果たす役割の可能性や、道路交通セクターの脱炭素化への道筋は各国・地域特性に応じて多様であること、LCAでのEU、ブラジル等の乗用車GHG排出の評価事例、ブラジルではCN燃料による脱炭素化への貢献が非常に大きいことなどについて言及されました。

自工会の饗場氏は、自工会は2050年CNを目指して全力で取り組んでおり、マルチパス・アプローチを多様な地域事情に合わせて推進中であること、また、ISFMやTurin Joint Statement on Sustainable Biofuels等、持続可能なCN燃料に関する国際協力も活用しながら、着実な排出削減を行うことの重要性について紹介しました。

3.有馬先生によるまとめ
  • マルチパスへ持続可能なCN燃料が果たす役割は非常に重要であり、導入実現には、投資支援やインセンティブ提供等、政府が果たす役割は大きい。
  • LCA評価が重要であり、持続可能燃料の性能評価のための共通基準も必要となる。
  • 持続可能な燃料の発展に向けて、COP30・ブラジル開催へ向けた国際協力に期待したい。

(各登壇者のプレゼンテーションはこちら)

登壇者

プレゼンテーション

Liana Gouta氏(FuelsEurope)

The role of renewable fuels in the decarbonisation of transport

Ricardo Abreu氏(UNICA)

An overview of the Brazilian Sugarcane and Bioenergy Industry and opportunities

Ilkka Hannula氏(IEA)

Role of sustainable fuels in clean energy transitions

坂本 敏幸氏(一般財団法人日本エネルギー経済研究所)

Quantitative Analysis on Multi-pathway Approach toward Carbon Neutrality in Road Transport Sector

饗場 崇夫氏(一般社団法人日本自動車工業会)

Diversity in Carbon Neutrality -Importance of Carbon-Neutral Energy-

4.結果概要

各登壇者からのプレゼンテーションを通じ、道路交通部門の脱炭素化に向けてCN燃料が果たす役割や、日本が進めるマルチパス・アプローチの重要性について理解を深めると共に聴講者へ発信致しました。自工会としましては、ブラジルが議長国を務める来年のCOP30に向け、国際的な連携を深め、道路交通部門における多様な道筋による脱炭素化を追求してまいります。

(左上から)
Gouta氏、Hannula氏、
Abreu氏、
饗場氏、Garcia氏、有馬氏、米澤氏、坂本氏

セミナーの様子

イベント配信録画(英語オリジナル音声)

イベント配信録画(日本語同時通訳音声)

▼COP27@エジプト/シャルム・エル・シェイクにおけるJAMAサイドイベントのレポートはこちら
▼COP28@UAE/ドバイにおけるJAMAサイドイベントのレポートはこちら

【略語便覧】

BAU

Business As Usual

成り行き

BECCS

Bioenergy with Carbon Capture and Storage

炭素回収・貯蓄付きバイオマス発電(技術)

BEV

Battery Electric Vehicle

電気自動車

CDR

Carbon Dioxide Removal

炭素除去(技術)

CN

Carbon Neutral

カーボンニュートラル

DACCS

Direct Air Carbon dioxide Capture and Storage

二酸化炭素直接回収(技術)

GHG

Greenhouse Gas

温室効果ガス

JAMA

Japan Automobile Manufacturers Association

一般社団法人日本自動車工業会

ICEV

Internal Combustion Engine Vehicle

内燃機関自動車

IEA

International Energy Agency

国際エネルギー機関

IPCC

Intergovernmental Panel on Climate Change

気候変動に関する政府間パネル

NZE

Net Zero Emissions by 2050

IEAのシナリオの一つ

OICA

Organisation Internationale des Constructeurs d'Automobiles

国際自動車工業連合会

SDGs

Sustainable Development Goals

持続可能な開発目標

WG3

Working Group 3

IPCC内で緩和を取り扱うワーキンググループ

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